私の師匠は沖田総司です【下】
屯所への帰り道は足取りが軽かった。
龍馬さんに会えたからなのかは分からない。でも、体も心も軽い。
こんな軽い気持ちになったのは久しぶりです。
「あ……」
散らすように振る雪の間々から屯所の影が見えます。
龍馬さんの懐中時計を懐の奥へと入れると、屯所の門を静かに潜りました。
さっきまで龍馬さんに会っていたという事実が後ろめたいのか、屯所の中をコソコソと移動してしまいます。
長い縁側を歩く。
歩くとギシ……ギシ……と床が軋む音がします。
「……?」
歩く途中、奇妙ないやな予感がしました。
一回だけ、後ろから私とは別の足音がしたのです。
誰……?
「きゃっ……!」
後ろを振る変える間もなく、誰に着物を掴まれ、縁側の外に投げ飛ばされた。
ドンッ!と身体が硬い地面に落ち、全身に意識が飛びそうになるほどの衝撃が走った。
「な、何……?」
痛みと衝撃で震える体を起き上がらせようとすると、起き上がる前に上からバシャと大量の水を掛けられた。