私の師匠は沖田総司です【下】
髪や顔からポタポタと垂れる雫を感じながら、私は呆然と座り込む。
ずぶ濡れの着物の上に冷たい風が当たり、全身にガラスの破片を打ち付けられているような痛みが走る。
……何が起きたのか全く分からなかった。
いや、何が起きたのかは分かる。突然、地面に落ちたと思ったら、大量の水が頭上から降ってきた。
頭を働かそうとしても、麻痺したかのように動きは鈍い。
誰がこんなことを……いや、誰かは決まってる。
「蒼蝶さん、ずいぶん素敵な姿やね」
「艶子さん……」
そこにいたのは嘲笑うかのような笑みを顔に張り付けた艶子さん。
その手には水が入っていたと思われる、底が深いバケツのような物がある。
彼女が私に水を掛けたのは明白だった。
「なんや、その目。蒼蝶さんが悪いんよ。勝手に外に出ていって帰って来なかったんやから」
だから、これはお仕置きとでも言いたいのだろう。
または勝手なことをするなという警告のつもりか。
どちらかは分からない。もしかしたら、どっちの意味もあるのかもしれない。
私は寒さで震える身体に力を込め、ゆっくりと立ち上がろうとした。
「っ……!」
地面に足をつけた瞬間、足首に電撃のような激痛が走った。