私の師匠は沖田総司です【下】
受け身をせずに体を地面に打ち付けたせいで、足首を捻ったらしい。
足首を抑えて蹲る私を見て艶子さんはクスクスと笑う。
「痛そうやなぁ。大丈夫かえ?」
「ええ……、これぐらい、大丈夫ですよ」
足の痛みを堪え、立ち上がる。
水に濡れた身体の体温はなくなり、足首には激痛。
正直、泣き出してしまいそうなぐらい辛い。
けど、辛さよりも艶子さんに負けたくないという気持ちの方が大きい。
だから涙を流さずにいられる。
「ふーん、そっか。じゃ、お大事にな」
艶子さんはどこかへ行ってしまう。おそらく、仲間のところだろう。
「ゲホ、ゲホッ……ケホ……」
胸が苦しくなり、乾いた咳がでる。
早く着替えないとこじらせていた風邪をさらにこじらせてしまう。
痛む足を引きずり縁側に上がる。
そして壁伝いに歩き、部屋に入った途端、力尽きて畳の上に倒れ込む。
倒れた拍子に懐から龍馬さんの懐中時計が飛び出した。
「ケホ、ケホッケホッ……」
なかなか治まらない咳をしながら懐中時計に手を伸ばす。懐中時計に手が届くと、私は胸に抱え体を丸めた。
「大丈夫……。私は一人じゃない……」
だから、まだ大丈夫……。