私の師匠は沖田総司です【下】
師匠、ごめんなさい
最後に龍馬さんに会って、もうすぐ1ヶ月になろうとしていた。
私にとっての生き甲斐は、組長の未来を変え師匠を成仏させることと、龍馬さんに会いたいという気持ちだけでした。
「う゛っ……ぐ……ぇ……」
強い吐き気を堪えきれず、厠で胃の中のものを吐き出す。
吐き出すと言っても出てくるのは胃酸ばかり。
最近では食欲もなくなり、胃には殆ど何も入っていないはずなのに、毎日強い吐き気に襲われる。
おそらく日々の強いストレスで、胃がおかしくなったんだ。
口いっぱいに広がる酸っぱさを感じながら、厠を出る。
未だ痛む足首を引きずりながら歩いていると、反対側から歩いてくる2人の隊士とすれ違った。
「おい、天宮さんの話、聞いたか」
「ああ。艶子さんに女中の仕事を全部押し付けてるんだってな」
「最悪な女だよな。いくら組長たちから一目置かれてるからって」
……私の噂話をしている隊士たちは、わざと私に聞こえるよう話しているんでしょうね。
少し離れた距離でもハッキリ聞こえてきます。
ですが、2人の隊士さん。その噂には訂正する部分があります。
私は元々隊士であって、女中ではございません。今まで私が女中の仕事をしていたのは、井上さんが少しでもらくになるようにと思ってのことです。
だから私は本来女中の仕事をしなくてもいい訳です。