私の師匠は沖田総司です【下】

「ひっ……あぁ、うぁ……い、いやっ!いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

私は組長の身体を突き飛ばすと、人を押しのけて屯所から飛び出した。

町を歩く人に何度も何度もぶつかって転びそうになる。

後ろから怒鳴る人の声が聞こえるけど、私は気にせず走り続けた。

がむしゃらに走っている内に、幾重にも重なった雨雲から大粒の雨が降り注ぐ。

雨で全身がびしょ濡れになっても私は足を止めることなく走った。

そして、気が付くと川原まで来ていた。

龍馬さんとの思い出の場所。そして、約束していた場所。

がむしゃらに走っていたつもりだったけど、私の身体は無意識にこの場所を目指していたらしい。

「う……、ひっく……、ぅあぁぁぁぁぁぁぁ!」

濡れた地面に膝から崩れ落ちると、私は空に向かって大声を上げて泣き喚いた。

悲しくて、悲しくて気が狂いそうだった。

誰も信じてくれなかったのが悲しくて寂しい……。どうして、どうしてこうなったの……。

今まで我慢してきた気持ちと涙が堰を切ったように流れ、涙は雨と一緒に流れ落ちた。

声が枯れるまで泣くと、心が空っぽになったような虚しさだけが残った。
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