溺れて、染まった1日に
すると、彼も立ち上がって私の腕を掴んだ。
なっ、足しか使えないじゃん!
あたふたしていると、椿君はぎゅっと私との距離を縮めた。
「誤解されちゃうからっ…!」
「え?聞こえなーい」
「だっ、だからっ…」
視線を椿君からずらした瞬間。
椿君は私の顔を覗き込んで、
「俺のこと名前で呼んで、約束」
そんなことを真面目な顔で言った。
………どうして私に構うんだろう。
私なんか、ただの同級生なのに。
他の子に勘違いされるようなことばっかりして。
「天然なら、怒るからね…」
「俺は天然じゃないよ」
歯並びの良い歯をのぞかせて、キラキラの笑顔で笑う奏。
この人、ずるいなぁって。なんとなく思った。
けど、あまり感情を探ると、面倒なことになってしまうから。
私は席に着いて、優真の背中を眺めながら次の授業のノートを開いた。
……きっと、踏み込んじゃいけない線を踏んじゃったんだな。
***
午後最初の授業。
学活で、話し合っている内容は、再来週の交流会。
ちなみに私は、学級の副会長になってしまったので、とても忙しいです。
ついでに言うと、会長が優真。
美月ちゃんも書記として学級役員になっている。