夫婦ですが何か?Ⅱ
ーーーーNEXT MORNINGーーーー
覚醒した意識で徐々に目蓋を開けて光を取り込んでいく。
意識は覚醒していてもぼやける視界はどうにもならない。
と、いうより・・・。
「コンタクト・・・・外し忘れてた・・・」
失敗した。と痛む目からそれを外すと、涙目になりながら体を起こしそしてすぐにぐにゃんと潰れた。
驚いた。
あまりの衝撃で崩れ落ちたソファーの上でパチクリと瞬きを繰り返し、素肌に触れる空気を感じながら昨夜の記憶を回想する。
決して激しすぎる行為でなかった筈。
それでも濃密で的確で呆れるほど長くお互いの欲に溺れた昨夜の記憶。
結果・・・・困惑する程骨抜き状態だ。
無意識に起きれば下半身の不自由と力の入らない腕に崩れ落ちた程。
あらら・・・これは・・・なかなか久しぶりの感覚だ。
それだけ昨夜の時間にお互い溺れきっていたという事。
乱れた髪を掻きあげて、力なく現状に失笑すると時計を見つめる。
土曜日の9時。
これまた長寝をしてしまったものだと深く息を吐いて明るい窓の外を見つめる。
しばらくはそうして視力の悪い目で意味もなく窓を見つめて、でもすぐに気がつく不在の姿。
さすがに気怠い体を起こしてリビングに視線を走らせ一周。
いない。
捉えられる範囲で気配の全くない姿に眉根を寄せて、なんとかソファーに座り直した瞬間に気がつく彼の痕跡。
テーブルの上に置かれた白い紙が、多分何かのメモであると手を伸ばし。
乏しい視力を集中させて文字の解読をすれば。
おはようハニー♡
ちょっと会社にやり残してきた事あるから行ってきます。
お昼には戻ると思うけど。
あっ、何かあったら電話して、寂しくなったらでもいいよ♡
愛しのダーリンより
「朝一で・・・ウザい」
ぽつりと発した言葉を彼が目の当たりで聞いたなら『酷いよ千麻ちゃん』と叫びそうだと予想して小さく笑う。
まぁ、仕事なら仕方ないか。
そう納得すると何とか足を奮い立たせてガクガクとする歩調で寝室に向かった。
母である私が長寝なら娘であるこの子も随分な長寝だと、ベビーベッドで寝息を立てている翠姫を見つめて苦笑いを浮かべてしまう。
しばらく愛らしい愛娘を見つめ、さすがに肌寒いとタオルケットを巻いた体をクローゼットにその身を動かした。