夫婦ですが何か?Ⅱ
『・・・・驚いた、』
「何でですか?」
『いや・・だって・・・、えっ?絶対俺の方が正常な反応だよね?』
酷く困惑した・・・でも少し眠気交じりの声で戸惑いを示す彼は正解だ。
チラリと確認した時刻は深夜の2時程。
多分、さすがに就寝中だったらしい彼を着信音で起こしての現在の会話に、夢とリアルの狭間にいるような彼の反応。
やはり、さすがに身内と言えどこの時間帯の電話は非常識だと、ゆっくり目蓋を下し息を吐く。
「・・・・すみません。夢にお戻りください」
『ちょっ・・・あ、ちょっと、ちょっと、待ってっ、』
別に嫌味でなく純粋に睡眠に戻るように促して携帯を耳から離し始めると、すぐに待ったをかけて響く彼の声に引き止められる。
その指示のままに耳に携帯を戻していけば、何か体を伸ばしているのか『ん~』と言う声とその後の吐きだされた息。
『ふぅっ・・・今ちゃんと起きたから・・・、もうちょっと話そうよ、』
「眠くないんですか?」
『千麻ちゃんの声聞いたら別のところも起きた・・・』
「・・・・痴漢電話でしたら即刻遮断しますが」
『あははっ、冗談だよ』
まだ多少の眠気交じり。
でも言葉の通りにだいぶ覚醒したらしい声が冗談という形で響いて、思わず口の端を上げ聞こえぬほどの声で小さく噴いた。
『で?・・・・こんな遅くにどうしたの?』
「・・・・一緒に・・・飲みませんか?」
『・・・・えっと・・・電話越しにって事?』
「はい。・・・ちなみに私は今ベランダで冷酒です」
『フッ・・・了解~。今キッチンから何か漁って俺も外出る』
そう言ってすぐに移動するような音が聞こえる。
扉の開く音なんかの移動音を聞きながら、自分の手にある日本酒を一口流し込んで喉を潤す。
そんなちょっとした間の後にキッチンに到達したらしい彼が何やら色々と物色しているような音が聞こえ。
『俺は・・・ウィスキーロックにしようかな』
「いいですね。・・・・私はハイボールが飲みたいです」
『作ってあげてもいいけど・・・届けるころには氷溶けてるよ?』
「じゃあ、その原液お土産に帰宅してください。天下の大道寺の社長様宅・・・なかなかのランクのお酒が名を連ねているのでは?」
『フフッ・・・まぁ、くすねがいがある感じではあるけどね・・・』
私のパクッてこい発言にクスクスと笑いながら色々な瓶を触れているらしい彼。