夫婦ですが何か?Ⅱ






でも飲む銘柄は決まっていたらしい彼がグラスにカランと氷を入れる音が静かに凛として聞こえて、目を瞑れば隣で彼がそれを作っている様に感じるほど。


そして、トクトクと液体が注がれ氷がひび割れる音。


ああ、美味しそうだと口の端を上げればようやく耳に戻る彼の声。



『お待たせ・・・、飲もうか、』


「いいですね、ウィスキー・・・。私もこれ飲んだらウィスキーにします」


『フフッ、飲むねぇ・・・、単なる眠れぬ夜のお供?それとも・・・不安をお酒に逃したい?』



相変わらず分かっていて含む言葉を吐く人だと思う。


いや、私が根本悪いのだ。


こんな時間に非常識だ電話をし電話越しの飲み会に誘いをかけたのだ。


これは言わずもがな・・・、



「・・・『寂しくなったら電話しろ』」


『・・・・』


「そう言ったのは・・・あなたでしょ?ダーリン、」


『・・・・フッ・・・ははぁ・・・本当・・・狡いなぁ・・千麻ちゃんは、』


「何がですか?」


『ん~?抱きしめられない時に抱きしめたくなるほど可愛い言動行動とっちゃうんだもん・・・』


「普段は可愛く無いとおっしゃりたいので?」


『もう・・・すぐにそうやって揚げ足取って・・・』


「フッ・・ハハッ・・・すみません。・・・あなたとくだらない揚げ足取りの会話するのが・・・結構好きなのですよ・・・」



軽く笑ってグラスの中の日本酒を煽って。


それなりに明かりはあれど、ピークの夜景よりはその輝き失せる夜景を見つめる。


まだ少し肌寒い夜風に髪が遊ばれて、同じ風とは言わないけれど似たような物を彼が感じているのかと不意に思う。



『・・・本当に驚かされるよ』


「・・・何故ですか?」


『千麻ちゃんが自分の感情に素直に能弁だから、』


「私はいつでも感情のままに言葉を口にしてますが?」


『ああ、訂正・・・千麻ちゃんが・・・俺に対しての・・【恋心】?を、口にするのが・・かな、』


「・・・・大好きよダーリン」


『そんな取ってつけたような告白じゃなくてね』



結局は揚げ足を取って言葉を返せば苦笑いらしき失笑で反応を返す彼。


その先でカランと彼のグラスの氷が割れる音がして、多分彼が酒を口に運んだのだと気がつく。


本当に・・・。


いつもの様ですね。


姿さえ隣にあれば何も変わらないいつもの夜と一緒。


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