夫婦ですが何か?Ⅱ
なんだか期待に満ちた彼の反応を見るまでもなく感じてしまえば本能。
焦らして虐めてその反応をより楽しんでしまう。
『本当に気分屋で意地悪なんだからなぁ、千麻ちゃんは、』
「そんな私がお好きでしょう?」
『今すぐキスしたいくらいに、』
「・・・・はい、今しました」
『・・・ええっ!?不意打ち!?全然身構えてなくて手ごたえないんですけど!?』
「いや、元々想像であって手ごたえない物ですからね」
『違う!そうじゃなくてもっとしっかりシチュエーションをだね、』
「はぁっ・・・面倒な、ファーストキスに憧れる女学生ですかあなたは、」
『千麻ちゃぁん!?』
ああ、楽しい。
彼が見ていないからこそ存分に口の端を上げてこのくだらないやり取りを楽しんで。
もうすでに日付の変わった昨日の不安が徐々に浄化していくのだ。
大丈夫・・・。
繋がっている。
しっかりと何重にも固結びで私達はもう繋がっているのだと、その身は離れても感じてしまう。
おかしなものだ。
あんなに・・・あり得ないと思っていた我儘なお坊ちゃま上司であった存在なのに。
不意に夜空を見上げて視界に入るのは、幻想的でも何でもない都会の光にその身を小さくしている月。
それでも・・・小さくとも輝きは上等。
「・・・・月が・・・綺麗ですね」
『・・・・・それは・・「我君ヲ愛ス」と言う意味でしょうかね?』
「どうでしょう?でも・・そう取りたいのでしょう?乙女思考でムードある空気が好きなあなたは、」
『・・・・ねぇ、・・・キスしようよ・・・』
「・・・・今、あなたの胸座掴んで引きよせました」
『フハッ・・・ワイルド~』
彼の乙女チックシチュエーションをぶち破って、強引に事を仕掛けたような想像を口にすると。
私らしいと感じてか、軽く笑った彼がしばらく無言の後、
『今・・・驚いたけど満更じゃない感じに千麻ちゃん見下ろしてる』
「ああ、それは想像しやすいです。ってか、私の中のあなたは殆どそんなイメージで構築されてます」
『こんな美男子な旦那捕まえてそんな印象ですか?』
「運がいいのか悪いのか、私の周りは容姿端麗な人間で溢れかえってて・・・今更あなたの容姿に改めて魅入る事はそうそうないかと」
『俺は千麻ちゃんが常に美人で可愛くて魅入ってる生活してるけど?』
「・・・・キスする気あります?」
『フフッごめんごめん・・・』
その『フフッ』に色々と含みを感じて少しムッとするわよ。