夫婦ですが何か?Ⅱ





どうせ私が照れたとでも思っての軽笑でしょう?


まぁ、多少・・・多少ですよ?多少変な感じにもどかしくなりましたけど。


感情に素直すぎるあなたの言葉はいつも直球で時々避けそこなって的に当たる。


今がすぐ隣でない電話越しで良かったと言うくらいに、大きくは反応していないけれど小さな・・・他者であるなら気がつかない変化でさえ見事に見つけ出すこの人だから。




「胸座掴んだ手はそのままで・・・・、引き寄せて今首の後ろに反対側の手を回しました」


『・・・・・じゃあ、今俺からキスしようと顔傾けてかがんだ、』


「・・・【出直し】・・・そんな風に待ったかけましたよ」


『フッ・・・意地悪~』



お互いにクスリと笑って鮮明すぎる光景を頭に想像のシチュエーションに酔いしれて。


想像と言えど鮮明なのはお互いにそれが当たり前の日常だから。


完全なるバカップルでないかと呆れもするのに、何が悪いのかと開き直る感情もある。



「・・・・私が仕掛けたんです。・・・あなたには優先権がないのですよ」



クスリと笑って彼の唇にゆっくり重ねる。


勿論想像で、


特別『今しました』と告げなくても彼ならこの出来上がっている空気を感じ取って、同じシチュエーションを描いてくれている筈。


それを物語るようにお互いに無音の通話が続く。


少し彼の息遣いを感じて、頭の中ではしっとりとした口づけを交わすとゆっくり離れて目蓋を開ける。


勿論映るのは夜風ばかり遊ぶ自宅のベランダで、フッと力なく笑うとようやく彼に声をかけてみる。



「・・・・どうでしょう?・・・少しはキスの感覚味わえましたか?」


『・・・・・・ベッドに走ってイケない事しちゃいたいくらいに、』


「どこの中学生ですか・・・」


『さすがに庭に続くテラスで露出は出来ないし、』


「ハハッ・・・そうですね」



想像容易な彼の実家のテラス。


苦笑いでそこに存在する彼を浮かべながら笑いながら頷いてしまう。


一体こんな時間帯に電子機器を使用して何をしているんだか。


それも喧嘩の真っ最中だったというのに微塵もそんな雰囲気なくいつもの様に間抜けな会話をして。


でも、それが必要で。


一番の特効薬。




常備薬として常に手に無いと不安な程、私には彼とのなんでもないような時間が当たり前で大切で・・・支えられている。


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