夫婦ですが何か?Ⅱ
「・・・深夜に起こしてしまってすみませんでした」
『ん?いや、いいよ。千麻ちゃんからの電話なら悪と戦ってる真っ最中でも応答するって、』
「フッ・・・どんな悪ですか?」
『ん~・・・千麻ちゃんを不安にするような要素全部・・かな』
「・・・・」
少し、今までのおふざけな会話からトーンの変わったセリフ。
それに気がついて動きだしていた体を止めた。
思わず言葉も途切れてしまった間に、察したように声を響かせたのは彼。
『だから・・・・こうやって俺と話す事で千麻ちゃんの不安と戦えて、それが薄れるなら本望。話す事で千麻ちゃんが笑って怒って意地悪して・・・、そうやって本来のままでいてくれるなら・・・
俺はいくらでも戦いますよ?』
「・・・・なら・・・一番に戦うべきはあなた自身という事になりますよ」
『ハハッ・・・酷い・・・でも、的を得てもいるね』
不安の第一は彼がもたらすものだとおふざけに返せば、苦笑いの失笑で肯定する彼にクスリと笑って。
でも・・・・、
そうね・・・。
「ありがとうございます。・・・・・頼りにしてます、妄想ヒーローさん、」
『「シュワッチ?」』
「そっちですか?今はバイクに跨ってるほうを想像して言ったんですが」
『あれぇ?なかなか合わないねぇ』
「フフッ・・・まぁ、すべてが完璧に相性のいい夫婦なんてつまらないでしょう?」
『じゃないと、夫婦漫才も成り立たないや』
お互いに締めのようにクスリと笑って一呼吸。
明日の戦に備えてお互いに根本は繋がっているのだと再確認したような時間。
だから派手に言い争って喧嘩しようがもう大丈夫だと。
まぁ、そんな喧嘩は元々する気はないのですが。
「では、・・・おやすみなさい」
『うん・・・おやすみハニー』
一瞬の迷い。
自ら切ろうか、切られるのを待つか。
でも、先に絶ち切ったのは私。
切られて、自分ばかりが余韻に浸るような機械音は耳にしたくなかったから。
余韻に惹かれるのは、私に感情残して浸るのは彼の方であってほしい。
逃がす気は離れる気は毛頭ないけれど、特に縛る事なく自然に彼に寄り添っていてほしいのだ。
まぁ、望むまでもなく・・・あなたは一生そうであるのでしょうね。
確信にも似た自信と信頼。