夫婦ですが何か?Ⅱ




自分を失うよりもずっとずっと、


彼を失う方が怖い。


散々与えられてきた甘いすべての物が次の瞬間にはもう手に入らないかと思ったら恐ろしくて耐え切れなくて。


こうして今その中に包まれていても震えて泣いてしまうほど、傍から見たらどれだけみっともない姿であろうと感情のままにこうして泣き崩れてしまうほど。







私に彼は絶対的に必要な人なのだ・・・・。


無くては空を飛べない・・・片翼のような人。








「っ・・・ふっ・・ううっ・・・」


「・・・千麻ちゃん・・・・・、千麻ちゃん、」



しっかりその存在示すように私に腕を巻きつけ自分の身に引きよせながら名前を呼んで。


宥めるように髪を撫でると少しの間の後にクスリと小さく笑う。



「・・・・シュワッチ・・、」


「・・・・・」



唐突に耳元で囁かれた一言に涙目を丸くして振り返れば、どうやらかなり激しい泣き顔だったのか堪え切れなかったらしい彼が小さく噴き出す。


さすがにその反応にムッとして睨みつけると『ごめん』と軽い調子で困ったように苦笑いし。



「頑張って・・・・悪と戦ったけど・・・」


「・・・・」


「3分過ぎてちょっと弱った。・・・・でも、俺は元気に傍にいるよ」



弱ったの部分で自分の痛々しい傷にチラリと視線を落とし、見た瞬間に痛みを思いだしたのか苦痛の表情も見せた彼がそれでも微笑む。



「でも・・・ちょっと後悔・・・」


「・・・・後悔?」



今更どの部分に後悔の念を抱くのか。


困惑のまま泣き声健在で疑問を返すと、痛みでやや辛そうな癖ににっこりと悪戯っ子の様に笑う彼。



「【俺の女に手を出すな!】

・・・って、一度言ってみたかったんだよね」


「・・・・」


「すっかり忘れて片付いちゃった・・・」


「・・・・激しく・・・馬鹿・・・、」



本当に・・・本当に・・・・



馬鹿で・・・愛おしい。



ダーリン・・・。



スッと体を捻ると彼の首に腕を巻きつける。


でも傷が痛んでいるのを知っているから体は密着させず。


それでも頬に彼の髪の感触を得て、私の頭を彼の手が支えた瞬間にそれだけで最高に至福を感じる。




「・・・・・・最高のヒーローよ。・・・ダーリン、」


「むしろ、本当にカッコイイヒーローは千麻ちゃんだよ」



そう言って思いだしてクスリと笑う彼がすぐに回想したセリフの再現。


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