夫婦ですが何か?Ⅱ
「『私の男に・・・何してくれてんのよっ!!』
・・・フッ・・・惚れ直すわ」
「・・・ああ、」
「どうしてくれんの?・・・これ以上千麻ちゃんに堕ちたら」
心底困る。
そんな表情を作り上げ、次の瞬間にはクスリと笑って額を寄せ。
至近距離から私の目を覗き込むと必然の様に顔の距離を埋めようとし、・・・・すぐに離れた。
いや、離れざるを得なかった?
「おー・・・片付いたかぁ」
「こっちも証拠ばっちりです」
階段を上から覗き込み声をかけてきた2人の姿によって。
特に急ぐでもなく普通に階段を降りてくる姿は対照的で、一人は相変わらずな微笑み携え、もう一人は平常時よりやや不満そうな無表情。
今となっては何の探りもなくこの2人を見ることが出来ると、不思議な気持ちで見つめたのは榊と新崎だ。
新崎が何やら手に持った写真やそのデータらしきものが入ったUSBを彼に示し、榊は我関せずと言った感じに倒れている犯人を覗き込むように見下ろしている。
「ハハッ・・・伸びてる。茜・・やりすぎじゃね?」
軽く呆れたように笑ってこちらを振り返った榊に何とも言えない気持ちになって、彼は彼でチラリと私を意味ありげに見つめてくる。
その様子でどうやら感づいたらしい榊が一瞬確かめるように私を指さし、それに肯定を示したわけではないのに次の瞬間には噴き出して笑った。
「うわぁ・・ハハッ・・・やっぱり面白い人だなあなたは、」
「更に殴りかかろうと鬼の形相だったしね、」
「煩いですよ・・・・」
榊の言葉に同調し軽く笑った彼が私の頬を軽く突っつき、その指に噛みつくような仕草で脅しをかけると更に楽し気にクスクス笑う姿。
なんかムカつく。
そもそも、まだ全然この人間関係の状況がつかめていないんですけど?
ムスッとして榊と新崎を見てから彼に視線を走らせれば理解したらしい彼が『あ~』と鈍い音を響かせ苦笑い。
そんな彼の代弁とばかりに笑いながら新崎が言葉を挟んだ。
「つまりは・・・私はあなたのご主人に雇われたボディガード件調査員です」
「・・・・・つまり・・探偵の様な?」
「まぁ、そんなところでしょうか?何でも屋みたいな物ですが、」
そう言われればあの写真をこの人が持っていても不思議には感じず、むしろ色々と納得して数回頷くと榊に視線を動かしていく。