夫婦ですが何か?Ⅱ
噴き出してすぐに失礼だと思い口元を押さえながら『すみません』と響かせる。
笑われた事にも特に興味なさそうな彼女がすぐに彼に視線を走らせ確認するように見つめぬくと。
「・・・もう時効なんだから、・・・落ち着いたらきちんと彼女に話しなさい」
「言われなくても話すつもりだったし。こんな事態にならなきゃね・・・」
少しだけムッとして見せた彼が【こんな】と示した現状を見渡して、すぐに苦痛に顔を歪め息を吐く。
そうだ。
そうだったのだ。
あまりに普通に会話して過ごしているから忘れていたけれど、彼は出血伴う怪我をしていたのだ。
我に返って傷を確かめるように服を捲ると今もじわりじわりと血が出続けている傷口は深い。
どこが・・・、
「どこが・・・どの辺が掠り傷なんですか?」
「はっ・・はは・・いや、まぁ、でも・・・ほら・・・刺さってなーー」
「刺さってなくても病院行けば確実に何針か縫う傷ですよコレ!!」
「え、ええ~、まぁ、縫う・・・かもねぇ。痛いの嫌だけど・・・」
「っ・・・なのに・・・あなたって人はぁ・・・、何をヘラヘラッ・・・・・、っ・・病院!!」
「は、はーい・・・・・」
逆らうべからず。
そんな苦笑いを浮かべた彼が新崎と榊に後始末を頼む。
すでに新崎が警察に連絡済みで私への調書も病院で彼の治療中にする事になった。
取り急ぎ彼と一緒にタクシーに乗り込み病院に向かう。
「・・・・痛みますか?」
「うーん、まぁ・・・痛いような熱いような・・・」
タオルで患部を抑えながら時々眉根を寄せる彼に思わず確認してしまう。
これだけの傷なのだから痛いのも当たり前であるというのに。
タオルも見事鮮血で染色されているのを痛々しい表情で見つめると、不意に軽く笑ったような息遣いを耳にして、すぐに頭に触れた彼の指先。
それに視線をゆっくり上げれば柔らかいグリーンアイと視線が絡んだ。
「・・・大丈夫だから」
「・・・・」
「むしろ・・・・千麻ちゃんのが心配」
「・・・・私・・ですか?」
「うん、ほら、今の今まではどこか興奮してたし痛みなんかは意識から飛んでたでしょ?どこか痛いところない?」
今度は眉尻下げながら心底不安そうに私を覗き込む姿をまっすぐ見つめ、すぐに言われた内容に意識走らせれば。