夫婦ですが何か?Ⅱ
「・・・・・全身がギシギシします」
「ギシギシ?」
「いえ・・・多分、あのバカに何度か床に叩きつけられるような事態があった物で・・・・、顔も2度程殴られて少し痛いような・・・・」
「・・・・・運転手さん。・・・マンション戻って、」
「・・はぁっ!?ちょっ、何言いだしてるんですか?」
「いや、今から戻ってあの男を葬り去ってこようかと・・・」
「何馬鹿な事言いだして・・、あ、気にしないでくださいね。この人ちょっと今怪我のせいで変な熱高いだけなんで、」
私への暴行の詳細を聞くなり一気に憤りが沸点まで到達したらしい彼が、とっても危険な笑みで運転手に帰宅を促すから焦って必死に止めてしまう。
そんな間にもスッと伸びた彼の両手が私の両頬を包むとグイッと自分の方を振り向かせ、かなり真剣な眼差しで覗き込んで確認。
「あのボケ男ぉ・・・べたべた触るだけじゃ飽き足らず、こんな愛らしい千麻ちゃんにあからさまな暴行をぉ・・・」
「ダーリン、顔近い、そして怖い、それに愛らしいって感じじゃないですから私。あなたの眼鏡で見た感想を当然のように口に出されるとこっちが困ります」
「ううっ・・・可哀想に、俺の胸でいっぱい泣いていいんだよ?」
「すみませんが、もうここ最近の貯蓄分であった涙は使い切ったかと」
「今夜は全力で慰めてあげる。・・・人肌で、」
「近づいてみてください。縫いあがったばかりの傷えぐり抜いてやる」
冷めた眼差しで傷口を見つめ、有言実行しようものならすぐさま一番の弱点を狙うと脅しをかければ。
さすがにまだ痛む傷口の事。
その痛みを想像してしまったのか酷く引きつったような表情で視線を逸らした彼に鼻を鳴らす。
いや、別に・・・触るな。というわけではないのですけどね。
そんな補足を頭でだけ響かせ、静かになった彼に軽く満足してその身をシートに預けて息を吐く。
でも確かに興奮していたのだ。
こうして冷静さを取り戻していくとそれと同時に痛みが強まって。
確実に疲労した体が痛みと一緒に重くなっていく。
ああ、少し・・・・いや、かなり疲れた・・・・。
やはり自分もそれなりに消耗していると理解し眉根を寄せ、思わず目蓋を下した瞬間。
スッと首の後ろから回った彼の手が頭に触れ、その感触に目蓋を開けると同時に柔らかく引き寄せられ彼の肩に頭を預ける形になる。