夫婦ですが何か?Ⅱ
ーーーーONE NIGHTーーーー
ようやく本来のペースを取りもどした流れで彼とソファーに座って息を吐く。
でも決して『疲れたね』『テレビでも見る?』みたいに平和な空気に満ちてそこに並んで座ったわけじゃなく。
座るとすぐに私は彼の方に体を捻り、さぁ始めようか。という感じに無言の提案。
傷を10針以上縫い合わせてようやく帰宅した彼はどっかりと背もたれに身を預けて苦笑いで私に対峙して。
ゆっくりと息を吐くとその身を起こして私を至近距離から覗き込む。
「で?・・・何から知りたいの?」
「・・・いっぱいありすぎて。・・・でも一から辿れば・・・、あなたはどうやってあの写真を入手したんですか?」
そう、根本。
一番最初に私が捉えたのはたった一枚の写真が始まりなのだ。
最初は彼自身がふざけて撮ったと思いこんでいた、彼もそう否定を返さなかったあの写真。
あの時点ですでに彼はこうなる事態を理解して予測して予防線を張っていたのだ。
私の質問に数回頷くと少し何かを考え込んでから言葉を切りだした彼。
「一応・・・前もって知っておいて。莉羽ちゃんとはそれこそ関係を持った日以降は接点を持ってなかったって・・・」
「・・・その前置きは今から話す事に重要ですか?」
「まぁ、変な疑いかけられたくないから」
「今更・・・、充分に誤解招いた後なのに・・・」
「いいから、」
とにかくそれを念頭において話を進めたいらしい彼に呆れつつも頷き続きを促せば、ようやく核心に触れ始める彼の説明。
「あの写真はね、最初は嫌がらせみたくウチのポストに投函されたらしいんだ」
「・・・むき出しで?」
「うん、たまたまそれがはみ出してて、莉羽ちゃんが偶然誰よりも先に見つけて引き抜いたらしいんだよ。で・・・わざわざ俺のオフィスに匿名で送りつけてくれたってわけ」
「それで・・・あなたが警戒するきっかけになった?」
「ご丁寧に【奥さん見たら困るでしょ?】って一言添えてね。最初は犯人から直になのかと思った。でもすぐに莉羽ちゃんが接触図ってきて事は理解したけど、」
「それで・・・新崎を雇ったんですか?」
「莉羽ちゃんと接触持つより早くね。写真はマンション近辺で撮られた物だったし、住んでる部屋のポスト理解してる段階で薄々このマンションの住人が怪しいんじゃないかと思ってたんだ」
確かに、彼が言うように後々追加された写真も殆どマンション近辺の物であった。
それに確かに住んでる部屋番号なんかはそう簡単に他人に知られる場面などない筈。