夫婦ですが何か?Ⅱ
それでも気持ちだけを言えば健在な彼が不満を示して口を尖らせるのに、息を吐くとその身を離す。
「迷惑ならいいです、」
「っ・・じゃないです!・・・触っていいなら・・触る・・・」
「・・・・触って・・」
こうやって一揉め挟んで結果触る流れになり。
促され、どこかいつもの様に自然に触れることが出来ないらしい彼が躊躇いながらそっと指先を胸につける。
一度静かに上から下に滑らせ、微々たる膨らみを確認すると包み込むように掌をつけた。
「・・・・触った・・よ?」
「・・・・・何でそんな初体験の男子中学生みたいな、」
「なっ、だって・・・だってお願いされてこんな真正面でって・・・、しかもこのあとエッチないんでしょ!?正直どういう感情で触ってどこまで許されるのか分かんなくて緊張するんだよ!!」
本気でそう思って戸惑っているらしい彼が不貞腐れたように顔を背けるくせにその頬は紅潮していって。
こうやって変化球を投げると時々ピュアすぎる反応をするから直面する私も戸惑ってしまう。
でも・・・可愛いですけどね。
「・・・・服の下から・・・触ってください」
「うっ・・・それは・・・自制心が崩れそうな・・・」
「・・・・・・・本当の事を言えば・・・少し・・困ってるんです」
「・・・困る?」
そう、困ってる・・・。
そう思っている今もその悪意に記憶や感覚が浮上して困ってる。
「っ・・・・ハッ・・ハハ・・・あの男が触った感触が・・・・肌に残ってて・・・少し・・・恐い・・・」
「・・・・・」
「・・・なんて、・・・そんな事言ったららしくなくて笑いますよねーー」
自分で情けないと、自分自身に嘲笑交えて自虐を吐けば、次の瞬間には彼の胸の中にいて酷く驚いた。
温かいと感じ、当たり前の彼の匂いに心底安堵し心が緩んで。
気を抜けばまた涙が流れてしまいそうな程感情が高ぶる。
「・・・・早く言えよ・・、
どうしていつも弱音が最後なんだよ・・・・千麻・・・」
ああ、
酷い人。
私が必死で涙を堪えていたというのに。
その一言で一瞬で目頭が熱くなり抑制のきかない涙が溢れて頬を流れた。
「千麻・・・・・レッドは完全無欠じゃない。怯えて恐がって泣いたっていいんだよ。
その間に・・・戦うのが俺っていうグリーンなんだから」
思わず小さく噴き出した。
泣いていいのか笑っていいのか分からないわ。
でも・・・、そう言ってもらえて死ぬほど嬉しい。
あなたの腕の中でだけ・・・弱って泣いて頼りたいから。