夫婦ですが何か?Ⅱ
普段であるなら突っぱねて皮肉の一つも返すところだけども。
それでも今日は異常の日であるのだ。
だからこそ向けた反応はその言葉その物。
「・・・誘惑・・・・しまくってますよ」
「・・・・おお、・・・ちょっと予想外?肯定?」
「私は普段口にしないだけであなたの事虐め倒したいくらいに大好きで執着してますから」
「っ・・・うん・・うん・・・いや、うん・・・知ってるけど」
言いながらそっと指の腹で彼の胸元を意味もなく摩って。
そして顔を上げた事で彼の顎の横に位置した唇をワザと掠めて言葉を弾く。
言葉の内容も普段なら皮肉で隠すものばかりで、今回も当然隠されるであろうと思って弾いた彼が見事動揺示して目を泳がせる。
それを勿論私は予測済みで言葉にしたのだけども。
「・・・・茜、」
「・・っ・・・ん、・・・ちょっと・・・」
「・・・・大好きですよ、」
「・・うううん、・・すっごく・・すっごく嬉しいけどぉ・・」
「けど?・・・・何?」
「いや・・・あの、その・・こう・・何て言うか・・・違和感ーー」
「嫌ですか?・・・・私が素直なの・・・嫌い?」
「っーーーー」
あざとい女子の様に効果絶大だと理解して首を傾げながら見つめ上げれば、思いっきり言葉を失った彼がそれでも言葉に否定を返そうと必死に左右に頭を振る。
その顔色は・・・酸性。
リトマス紙が赤く染まった。
それに満足して口の端を軽く上げると、そのまま弧を描いた唇を彼の首筋に押し当てフッと息を吐く。
「・・えと・・・千麻・・ちゃん、」
「・・・・・触ってたいんです。・・・触って安心してたい」
「うん・・・いや、嬉しいんだけど・・・興奮しそうで、・・っーーー!!」
『興奮』の言葉の響きと同時に唇で触れた部分を舌先でくすぐって、すぐに猫がじゃれつく様に彼の首元に頭を預けた。
そして匂いを確かめるように息を吸うと、
「・・・・・あなたの匂い・・・好き、」
「いきなり匂いフェチ!?」
「・・・・ダーリン、」
「・・・・はい、」
スッと彼の頬に指先這わせ、目線を合わせるようにその身を動かし真正面から見つめると。
期待半分な動揺でグリーンアイを揺らし、彼にとっては美味しすぎる反応の数々にどうやら対処しきれていないらしい。