夫婦ですが何か?Ⅱ





人間、抑制されたシチュエーションの時の方が変に熱が入ってしまうもので。


それに到達するまでのこの望まぬともドラマチックであった数日の展開もプラス。


助け出されてから今この瞬間までずっと先伸ばされていた口づけは、ドラマや映画で言う一番感情のこもる瞬間である。


それは当然の事ながら私達にも当てはまって。


一度目のどこかまだ駆け引き残るキスの後の感情的なキス。


攻め込んだのは私と言えど今度は彼も受け入れるように背中に手を回したのだ。


お互い同意してしまえばあっさりとその熱情に飲み込まれ、体の密度を増す毎に・・・いやそれよりも早く濃く密度を増す唇同士。


角度を変えながら貪って、それでも小さく念頭に扇情的時間には繋がらないと隅置いて。


それでも逆にその小さな抑制で背徳的効果も絡んで盛り上がる。


もう当たり前で、馴染んでいた筈の彼の巧みすぎるキス。


なのに現状が一番彼の存在に安堵し浸っている時であるからこそ余計に感じ入る物になって。


それは彼からした面でも同じらしく。


結果何事もなく私が自分の腕にある安堵感に浸り、存在確認や守護的な意味を含めて私の体をしっかり抱き寄せている。


そして呼吸もままならない・・・、むしろお互いに自ら呼吸する権利を放棄して相手の吐く息を飲み込んでいく。


頭の芯が痺れるような、時折開く目が霞むような。


どこか恍惚とした熱に浮かされお互いに呼吸の限界までそれに挑んで、終わりはどちらからともなく静かに離す。


濃密な口づけが止んでしまっても、そう簡単に消えない余韻で目蓋を下し、今もまだ感触求めて唇が動きだしそうな感覚。


久しぶりキスのみでここまで感情が高ぶった気がする。


恐ろしく甘美で巧みで常習性の高い彼とのキス。



「・・・・はぁっ・・・・、飛びそう、」


「ん・・・千麻ちゃんの表情色気半端ない。ってかフェロモン出てるよね絶対・・・」


「・・・・見下ろしたい」


「はっ!?」


「・・・膝・・・乗ってもいいですか?」


「ふ・・・複雑~・・・、めっちゃ嬉しくて可愛くて美味しい要求なのに・・・・」



繋がるものがない。


そんな複雑な表情で眉尻を下げた彼をじっと見つめ次の瞬間にはその身を動かし自己判断。


了承の言葉を鈍らせようと結果はいつだって自分が望んだままになるのだ。


彼が全力の否定を見せない限りは。


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