夫婦ですが何か?Ⅱ
「・・・・・いきなりセクハラですか?」
「セクハラじゃない」
「上司が部下の肌に意味もなく未許可に触れる。・・・セクハラです」
「フッ・・・本当・・・可愛くなくて可愛い・・・」
「あなたは相当熱でおかしくなっている様ですね、」
呆れた響き。
そう、こんな表情をするんだ彼女は。
少し・・・楽しくなってきたよ千麻ちゃん。
もう相手にしていられないと言いたげに彼女の視線が俺から外れて、それをすぐに引き戻すように悪戯な言葉を重ねていく。
実際には交わされていない、都合のいい夢の中のだけの会話。
「熱でおかしくなった俺が・・・今の千麻ちゃんには嫌悪するような未来を予言してあげようか?」
彼女の肩に寄りかかって相変わらず指先を絡めたまま言葉を連ねれば。
不愉快そうな彼女の視線が俺に下ろされ言葉を待つ。
今の俺たちの関係を口にしたらこの千麻ちゃんはどんな顔をする?
「俺と千麻ちゃんはね・・・・結婚するよ」
「・・・・また、馬鹿な事を、あり得ません」
「本当。色々とね紆余曲折はあったけど今じゃ可愛い愛娘を挟んで幸せファミリーだよ」
「・・・・少し寝られては?」
「フフッ・・・照れた?」
「あり得ない夢想に呆れただけです」
「・・・・夢想?」
あれ?
そう・・・なのか?
もしかして・・・・逆?
こっちが現実で・・・あっちが夢?
不意に入りこんだ迷いと不安。
そんな直後に徐々に目の前の光景が煙の様に散っていって、彼女の姿も霞がかってきた事に焦り始める。
ダメだ。
今は消えないで。
不安で不安で・・・。
待って!!
消えかけた彼女に手を伸ばして掴み直す。
その瞬間にパッと明るくなった視界に驚いて、冷静になっていけばその視界に驚いた表情の彼女を捉える。
「・・・・・驚きました、」
「・・・水城・・さん、」
「何でいきなり旧姓呼びですか?」
「・・・・・・千麻ちゃん?」
「はい、」
「・・・・髪・・・長い、」
「つい最近あなたの失態で断髪したばかりですが?」
皮肉交じりの言葉とその後の苦笑い。
そうして額に触れてくる指先に目を細め、艶やかな爪を捉えながらもう一つの確認。
「ね・・左手・・・」
「・・・・何ですか?」
俺の言葉に反応した彼女が左手を示すように差し出して、その薬指に2つ重なる証を捉えればようやく安堵し息を吐く。