夫婦ですが何か?Ⅱ


そして確かめるようにその指先に自分の指先を伸ばせば、笑ってしまうほど力不足で震える手。


それでも何とか指輪に触れるように華奢で白い指先を絡めとると安心。



「・・・・現実だ・・・」


「大丈夫ですか?言動がおかしくて不安なんですが」


「・・・・フハッ・・・やっぱり夢の続きみたい・・・」


「もはや恐いです。熱で辛いのかラリッてるのか・・・・」


「ははは・・・」



ラリッてる?


ああ、でもそんな感覚なのかな。


記憶の回想の様な夢を見て、熱と薬で夢と現実と記憶の狭間を行き来して。


こうしている今でさえ本当は夢の一瞬じゃないかって。


彼女の指にある指輪を遊ぶように触れながら天井を見つめる。


熱のせいで不思議な感覚に捉えているけれどさっきの様に場面が切り替わったりはしない。


その事にも小さく安堵し息を吐くと、不意に思いだした何か。


そう、さっき意識を失う前に何かを彼女に頼もうとしていたんだ。


何だっけ・・・。


そんな思考を巡らせていてもやはり本調子でないらしい自分の体が、再び休息求めて目蓋を下そうとしてくる。


困る。


少しは楽しいけれどまたあんな夢を見たら迷走しそうで。


ああ、それでも・・・。



「・・・・まだ熱が高いです。眠ってください」



そっと視界を覆う彼女の手に見事耐えていた目蓋が静かに閉じた。


閉じてしまえば意識もそれに合わせて静かに沈み始めて、またあの記憶の旅に向かうのかと軽く口の端を上げて。


でも直後に思いだした内容の要求。



「アレ・・・飲みたい・・・・・」


「【アレ】?」


「・・・・・凄く・・・飲みた・・」



『い』まで言いきれたのか?


彼女の手の温もりに促され目蓋を閉じれば言葉を発していても見事沈んでしまった自分の意識。


彼女の疑問の響きは聞き取っていた。


【アレ】だよ。


千麻ちゃん・・・・・【アレ】が飲みたい・・・・。




確かに・・・・・、


作ってくれたよね?



あれ?



もしかして・・・俺の熱にうなされた記憶違いじゃないよね?





千麻ちゃん・・・・・。



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