夫婦ですが何か?Ⅱ
ベッドに座らせらせ、俺の指示を仰いでクローゼットに入りこんだ彼女が程なくして部屋着である服をその手に戻ってくる。
彼女がそれを探している間に自分が出来る限りの服は脱いであって、彼女が姿を現した時には上は素肌、下はスーツのパンツに手をかけている場面。
それに動じることもなく近づいた彼女が静かに着替えを横に置き、脱いだ服をその手に集め始めるのに苦笑い。
「ねぇ、こんなにいい男が裸なんですけど?」
「・・・・だから何でしょうか?」
「もう少し恥じらったり動揺したりって無いの?」
「・・・・・まず、年下という段階で異性としてみても性的対象で見ておりませんので」
まったく興味のわかない対象外だとクールな表情で言い切った彼女にクスリと笑う。
そう言うけど、もう何年か後にはその年下の男と関係しちゃう仲になるんですよ?
そんな事を言ってもまた『夢想』だと切り返されるのだろうと心だけでつぶやき。
用意された服をなんとか身に纏うとベッドに脱力。
ああ、夢の中なのに・・・。
何でこんな怠いんだ?
さすがにそろそろ不満に感じてきた自分の倦怠感。
それさえなければ楽しい記憶旅行であるというのに。
目の回りそうな感覚でぼやけた天井を見つめて仰向けに倒れていると、スッとその間に入りこむように見下ろしてくる姿に口の端を上げる。
「・・・・・大丈夫ですか?」
「うーん・・・まぁ、生きてますよ?」
「存じてます」
俺の馬鹿な返答に若干の呆れをその目に浮かべながらそっと額に伸ばされた指先。
ヒヤリとする感覚が気持ちいい。
ずっと・・・触れていてほしいくらいに。
そう思えど願望に反して離れた指先に閉じていた目蓋を開け彼女を見つめた。
彼女と言えばその視線を自分の腕時計に落とし、戻すことなく言葉を弾く。
「スーツはクローゼットにかけておきました。シャツはとりあえず軽く畳んで洗濯機の上に。もしかしたらクリーニングに出されるかと思いましたので、」
相変わらず先を考えて、俺の行動を考えて動いてくれる。
そんな事を思いながら終始秘書の顔の彼女をじっと見つめ、その視線が戻らないかと小さく望む。
だけども記憶に添えば。