夫婦ですが何か?Ⅱ
「では・・・無事にベッドに送り届けましたので私はこれで、」
スッとその身を立ち上げ離れていく姿。
扉に向かっての後ろ姿を見つめ焦燥感働き言葉が喉元に込み上げる。
それこそ・・・
さっきも言いたくて・・・言えなかった。
「っ・・・傍に・・・いて・・・・」
どこかリアルに響いた自分の声。
その言葉に反応し歩みを止め振り返った彼女が意図を確認するように振り返り見つめる。
ああ、コレは夢想じゃなくて・・・。
現実にあった瞬間。
抱いた感情は少し違うけれど、あの時もどこか熱によって心が怯んで。
頼れる姿を傍に欲しかった。
俺の懇願の様な言葉に少し考えるような無言の間を置いて、それでも小さく息を吐くとその身を返しゆっくりと戻ってくる姿。
ベッドの縁まできて俺を静かに見下ろすと一言。
「どこの大きな子供ですか?」
「・・・・・よく分からないけど・・・不安なんだよ」
皮肉交じりの言葉に今も過去も感じていた本心を口にする。
確か過去に口にした筈。
この会話は記憶として成立している。
この後、こんな皮肉な言葉を向けた彼女だったけど・・・。
立っていた彼女の姿がより俺に近づく様にその身を床に下し、そっと伸びた手が前髪を退けるように触れてくる。
「傍にいますから」
凛と響いた言葉に小さく震える。
泣いて歓喜したいような感動を覚えて。
一気に安堵した感覚に満ちれば、過去も同じ感覚だったと思いだす。
「・・・・・ありがとう、」
「お坊ちゃまの我儘には慣れております」
結局は皮肉も返してスーツの上着を脱ぎ始めた彼女に心底安堵する。
堅苦しさの解放。
その身を置くとの意思表示の様な姿に脱力し、小さく口に端を上げれ瞬間にパッと目の前が煙のように掻き消えていく。
どうしたんだっけ?と、必死になれば多分この直後に記憶の自分は眠りに落ちたのだと思いだす。
そう、そうなんだ・・・・一度眠って、
次に起きたのは・・・、
鼻を掠めるどこか柔らかい匂いで。