夫婦ですが何か?Ⅱ
熱でぼんやりとしていて、それでも千麻ちゃんが作ってくれたホットミルクがえらく体に優しく作用したのを覚えてる。
・・・・思いだした・・・。
「コレが・・・・飲みたかったんだ」
「・・・・・作った事がありましたか?」
「・・・・・・・現実の・・・過去で、」
俺の言葉に不思議そうな表情を向けた彼女。
それを捉えてからカップの中身を覗き込む。
何が入っているのか。
今この彼女に聞いても答えてはくれないんだ。
知ってるはずがない。
俺が創り出したに過ぎない彼女が俺の知らない中身を説明できる筈がないんだから。
だからあえてその疑問はぶつけずに、実際には記憶に過ぎないその中身を再び飲み込むと息を吐く。
「・・・・・美味しい、」
「お褒め頂き恐縮です」
「・・・・・・・俺の記憶ではさ・・・、この後は朝目が覚めた時の記憶まで飛んじゃうんだ」
「・・・・・また・・・ラリッてますか?」
「・・・フッ・・・その言葉はさ・・・現実の千麻ちゃんがさっき口走った言葉だ・・・」
記憶の混雑。
夢と現と過去の記憶と。
高熱によって引き起こされたパラレルワールドの様な。
でも、一つだけ分かった。
3つすべてにおける共通点。
いつだって・・・・、
「いつだって・・・千麻ちゃんは俺の傍にいてくれるね」
「・・・・・」
過去の秘書の水城さんも、
現在の奥さんの千麻ちゃんも、
だからこそ俺の都合良しな夢の中の千麻ちゃんもその印象で構築されて。
どんなに皮肉屋でも傍にいて尽くしてくれる・・・優しい人。
思わず彼女の腕を引くと自分の体に引きよせ抱きしめる。
持っていたカップが布団の上に落ちたけれど夢の世界では都合よく処理されて。
現実には起こり得なかった抱擁に意識を集中する。
「副・・・社長?」
「・・・・・・その呼び方も嫌いじゃない」
「・・・・セクハラですか?」
「フッ・・・ごめん・・・切り返しに困るね?だって・・・君は俺が創り出した千麻ちゃんで・・・本当にはなかった時間だ。
あの時こうしたら彼女がどんな反応するか。なんて・・・俺も良く分からないんだ・・・・」
俺が分からないから、今腕の中にいる彼女も反応が鈍る。
ああ、でも一つ夢だから成せる事をするなら・・・。