夫婦ですが何か?Ⅱ
そっと腕を緩めどこか戸惑う表情の彼女を見下ろし頬に触れる。
俺の記憶が創り出した彼女で、本当の過去の彼女ではない。
分かっている。
そう分かっているけれど・・・。
「・・・・・俺は・・・・これから千麻ちゃんに酷い事をする」
「・・・・」
「利用して、縛りつけて・・・・、千麻ちゃんが与えてくれる優しさを理解しながら踏みにじって・・・・」
「・・・・副社長?」
訳が分からないよね?
言われても困るよね?
これを今口にしたとして何かが変わるわけじゃない。
夢の中の懺悔。
ただの自己満足だ。
でも・・・、
言わせて・・・。
「千麻ちゃんを・・・、
壊したいくらいに愛してる、
壊してしまったくらいに愛してる、
でも・・・・・何に代えても守りたいくらいに愛してる」
「っ・・・」
「だから・・・・・何があっても・・・、
見放さないで・・・・・
ずっとずっと・・・俺の傍にいて・・・・・」
お願い・・・。
そんな願いを込めて響かせた懺悔に彼女が無言で俺を見つめる。
困惑にその目を揺らして。
俺に自分の答えを探すように。
当たり前だ。
俺の思考によって彼女はその返事を返すんだから。
でもだから・・・・その返答は明確にしない。
都合良しな彼女の返答なんて求めないから。
俺の自己満足な夢でいい。
そう判断し困惑する彼女に実際には成されていない口づけを求めて顔を寄せると。
唇にそっと得た感触。
思わず口の端が上がって閉じかけていた目蓋を開けば、絡んだ瞬間こそは困惑の継続であった彼女の表情が、すぐにフッと困ったように微笑み口を開く。
「出直し・・・・」
ああ、それも・・・千麻ちゃんと過ごした時間の強烈な記憶だね。
大好きだった。
焦らされる感じも、少しづつ進んでいく関係も。
でも、この瞬間はもう二度と来ない時間かもしれない。
夢であっても尊い瞬間。
俺が創り出したとしても彼女の記憶を集めての彼女だ。
不思議だ・・・・あのホットミルクのおかげかな?
体の不調が和らいだよ・・・千麻ちゃん。
「出直さないよ・・・・」
「・・・・」
「起きたら後悔する」
「後悔・・・ですか?」
「・・・・過去でも夢の中でさえこの千麻ちゃんに手を出さなった自分に、」
ニッと笑って言葉を弾けば呆れたと言いたげな表情の後に口元に弧を描いた彼女。
「馬鹿ね・・・・ダーリン・・・、」
ああ、やっぱり・・・、
今の俺にはその響きが一番しっくりくるよ千麻ちゃん。