夫婦ですが何か?Ⅱ
呼ばれなれた響きに満足し、弧を描いた唇を彼女のそれに重ねるとゆっくりベッドに押し倒して。
今では懐かしさ感じる彼女の短い髪に触れながら濃密なキスを交わす。
実際にはなかった時間なのに鮮明に、あった事のように夢を構築できるのはそれだけ似たような時間を繰り返しているから。
だから分かる。
こうすれば彼女がどう反応するとか、こんな時小さく漏らす声が好きだとか。
軽く伏せられた目の長い睫毛が酷く好きだとか・・・。
夢なのにリアルな熱の共有に逆上せる。
心音がいやに早く強く響くのを感じて、自分の作りだした彼女を翻弄して溺れる。
思春期のガキか・・・・俺。
夢だと分かっているからこそそんな突っ込みを頭でしつつ、それでもなかなかこんな都合のいい夢もないと抗わず受け入れて。
不意に望む。
呼ばれたい・・・・。
「・・・・・千麻・・」
自分が呼ばれることを望んで、熱い息を漏らす彼女の唇に指先を伸ばして。
微睡んだ彼女の目と視線が絡んだ瞬間。
『・・・・・茜ーーー』
なんだ?
頭に直接的に響く。
あ・・・、
急浮上・・・・。
「・・・・・大丈夫ですか?」
聴覚が働く。
次いで視覚を働かせるように開いていた筈の目蓋をゆっくり開いていく。
その途中で嗅覚が働き、また夢の中なのかと困惑した。
でもすぐに答えのように響いた声。
「ダーリン?・・・・起きてます?」
「・・・・・・ん・・・多分・・・・」
「多分って・・・・違うって言うならこれは寝言でしょうか?」
呆れた響きの声の主を探して視線を走らせると、俺を覗き込むように見下ろすのは眼鏡もなく髪も長い奥さんの千麻ちゃんだ。
ああ、つまり・・・。
現実・・・。
そう判断し至る所に視線を走らせ自分が意識しなくともはっきりとした居住空間にどこか安堵。
「・・・・・なんか・・・疲れた」
「眠ってただけの分際でその発言・・・」
「分際って・・・病人なんだけど俺・・・」
リアル千麻ちゃんだ・・・。
どうも夢で甘ったるい彼女を見た直後だからかギャップがでかい。