夫婦ですが何か?Ⅱ
まさか彼女も夢の中で俺の都合良しにされていたなんて思ってもみないだろう。
ってか、知られたらなんかねちねちと不満を言いそうだ。
そんな事を思って夢の内容は語らず、のそりとその身を起こせば彼女が小さく息を吐いた。
「どうやら動ける程には回復しましたか?」
「・・・・・あ、本当だ・・・・」
「じゃあ、必要なかったですかね?」
「えっ?」
疑問を返せば答えのように差し出されたカップに視線の集中。
中身はさっきも夢で見た乳白色。
鼻をくすぐるほのかに甘い匂いも夢よりもっと優しく漂って。
無意識に近い感じにカップを受け取り、それでも軽く驚きながら彼女に視線を動かした。
「驚いた・・・」
「何がですか?」
「いや・・・よく、【これ】だって分かったな。って・・・」
あんな【アレ】【コレ】発言でその詳細を理解し作り上げた彼女に感嘆の声や反応を漏らすと、当の彼女は『ああ』と興味なさげに声を上げて。
「あなたが熱を出した状況で、私が作り出した物を回想すれば容易い事かと、」
「・・・覚えて・・た?」
「・・・思いだした。が、正解ですね。むしろ、あなたがよく覚えてましたね。たった一度飲んだ物を、高熱で意識も危うかったので覚えてないかと思ってました」
「・・・・これって・・・何が入ってる?シナモンっぽい風味もするんだけど・・・・発汗作用もありそうな・・・」
言いながら匂いを嗅いですぐに口に含む。
あっ、夢は夢でしかなかった。
そんなくらいに記憶より味覚を満たすそれに改めて感動し癒される。
そして飲んだ傍から体が熱くなるような。
「シナモンはおまけの微量です。温まるようにブランデーが少しとしょうがパウダーを、砂糖も適度に」
「ああ、成程・・・それで体熱くなるのか・・・・」
でもその詳細を知っても同じものは作れないだろうと思ってしまう。
絶妙な配分で出来上がったそれは何か一つバランスを崩すと簡単に味に違和感覚えそうで。
彼女だから成せるものだと理解して再度中身を口に運んだ。
「・・・・美味しい」
「お褒め頂き恐縮です」
「フハッ・・・」
「何いきなり笑ってるんですか?」
「ん?いや・・・・千麻ちゃんは千麻ちゃんだなぁって」
「意味が分かりません」
まだ熱があるのか?と額に怪訝な表情で触れてくる彼女をクスクスと笑って。
そっとカップをサイドテーブルに置くと彼女を引き寄せた。