夫婦ですが何か?Ⅱ
あのストーカー事件の3日後には莉羽さんは榊の名字になっていたと思う。
まさかのきっかけで再再婚決意時に居合わせた私達夫婦。
彼に至っては過去に複雑な因縁残る間柄ではあったけれど、こうして彼らが夫婦に戻った事や、今回の一件で多少関係修復に進んだと感じられる。
今日なんかは心ばかりにも再婚祝いと前回の迷惑の礼として贈呈品を購入した帰り。
もう面倒だからと外食で済ませようとこうして焼き鳥屋に足を運んだ現状。
すでに何皿か食べてビールもお互いに2杯目。
それももうすぐ飲み終わる。
話も自分たちの事でなく他人の。
そんな瞬間にふと感じたのは家族だという事と・・・、
「・・・・私の事女として見てます?」
聞いた瞬間にまったくそんな話題に振られると思っていなかった彼が、含んでいたビールを噴きはしなかったものの豪快にむせて悶絶する。
私の一言が原因だというのに『何をしているんだか』と言いながらむせ込んでいる彼の腕から翠姫を抱き上げて。
近くの店員に水を頼むと涙目で息を荒くする彼を見つめた。
今にも死にそうなくらいに苦しそうだな。と他人事のように傍観してビールを飲み込めば、ようやく話せるまで回復したらしい彼が私を見つめて疑問の投げかけ。
「・・・出たよ・・、千麻ちゃんの意味不明な突如の爆弾」
「見事受けそこなって被爆してましたね」
「死ぬかと思ったよ・・・・、で?なに?何なの?その『女として見てますか?』って、」
「いえ、なんとなく。・・・・こうして外食しても大衆的な店であったので」
「待って・・・、待ってよ?多分その心を突き詰めれば、俺が奥さんになった千麻ちゃんに気張る事なくムード作りの努力もしなくなったと言いたげだけどさ・・・・。そもそも、焼き鳥食べたいって言ったの千麻ちゃんじゃん!?」
「ええ、なんか匂いに誘われて、」
「でしょ!?別に俺が千麻ちゃんとの外食に手抜いたとかじゃないよね!?」
「・・・・ただ・・なんとなく思っただけですよ。・・・何ていうか・・・男女というより夫婦で・・・家族という括りだなぁ。と」
別に不満を持っての発言ではないのだと示せば私の言葉を反芻するように視線を泳がせ背もたれに身を預ける彼。
彼なりに納得するようにウンウンと頷く姿を確認していれば店員が遅ればせながら頼んだ水をテーブルに置く。
そのついでに焼酎を頼むと彼も便乗してそれを頼んだ。