夫婦ですが何か?Ⅱ
「成程・・・ね。まぁ、・・・そう言う夫婦も大半だと思うよ」
「良くも悪くも常に一緒にいますからね。それに子供が存在すれば夫や妻よりも父と母の印象強くなりますし」
「そういう感覚で不倫に刺激感じて浮気するんだろうなぁ」
「・・・浮気したいんですか?」
「ええ~、また飛躍?」
「いえ。なんかそれに共感するように口にされてたので浮気願望でもあるのかと」
「ないよ」
さらりと否定された言葉に何となく注目置いてしまったのは彼がふざけた感じに返さなかったから。
慌てるでもなく『何言ってるんだか』的に自分たちの間では問題外の論争だという態度が自然すぎて。
珍しくこの私が軽く小さな感動すら覚えてしまいそうな。
いや、軽く覚えていたからこその、
「どうしましょう?」
「ん~?今度は何?」
「今あなたの事すごく好きだと、異性的に感じました」
「ねぇ、ごめん・・・、本当に千麻ちゃんのツボるポイント掴めない・・・・。俺別に今心ときめくようなセリフ言って無いよね?しかもそんな淡々とした無表情で・・・」
相変わらず掴めないと眉尻下げての困惑表情を彼が浮かべて。
そんな流れの中に注文した焼酎が置かれていく。
空のグラスに氷を投入し翠姫を抱えながら瓶を開封しようとすれば、すかさず伸びてきた手がそれを抜き取り開栓する。
ほら、この絶妙なやり取りであっても。
特別言葉を話さずとも出来上がっている呼吸の良さ。
これを良くも悪くも当たり前になって、相手に少なからず飽きを感じるのが夫婦の落とし穴。
こうなって他の誘惑的な甘い匂いに誘われるのも人間の性。
それに乗るか乗らないかは個人の理性もあるのでしょうけど。
あなたみたいに最初から過剰に反応することなくあり得ない事だと問題としてあげもしない姿に小さく感動したんですよ。
自分らしく理屈的な事を頭に浮かべながら、私の代わりに酒を作り始める彼を見つめて。
その分量でさえお互いの好みを理解して慣れた感覚で作り上げる。
他人がどうかは知らない。
でも私はこのお互いを知りあっているような、他愛のない慣れた感覚が凄く好きだと思う。