夫婦ですが何か?Ⅱ
彼が作り上げた私好みの配分のそれを受け取り口に運ぶ。
彼も自分の好みに合わせ作ったそれに一緒に頼んでおいたライムを絞ると口に運び始めた。
その瞬間に不意に気がつく彼に対しての新たな疑問。
「そう言えば・・・いつも思ってたんですがレモンとかライムとか、絞っても混ぜませんよね?」
些細な疑問。
別に流して知識的に入れなくてもいいくらいの。
特別2人の関係に大きく影響するような事でもない彼の飲み方に今更なんとなくの流れで突っ込みを入れると。
飲みながら私の疑問を聞き入れた彼が、自分でも確かめるようにグラスの中身に視線を走らせた。
「ああ、・・・癖?なんかこうやって飲むのが当たり前になってた・・・」
「変わってますね。美味しいんですか?」
「ん~、よく分かんない。淡泊だったり突然強烈な酸味感じたり面白い感じ?」
「飲み物に面白さ求めてるんですか?」
「別にそういうわけじゃ・・・、癖だし、もう意識もしてなかったよ」
言いながら再び口に運んだ彼が不意にテーブルの上に視線を移して、何かを捉えると軽く笑う。
それに疑問の眼差し向ければ口元に笑みを浮かべたまま、無言で目の留まったものを指さし示してくる彼。
「千麻ちゃんこそ・・・・癖?」
「・・・・はい?」
「そーれ、・・・割りばしの包みでいっつも箸置き作ってるよね」
「・・・・・ああ、・・・無意識でした」
指摘され言葉でも補足し指摘されたのは自分の箸を今も支えて存在する手製の箸置き。
確かに彼が言う様に癖であるのだろう。
作った事も記憶していない程無意識で折り上げた物である。
そしてこんな風に意識したのも久しぶり。
意識してしまえばそれにまつわる記憶も浮上して。
そして脳裏に浮かんでしまう存在に今目の前にいる存在の色が鈍るほど。
癖である。
でも癖になった根本を辿れば・・・。
『千麻は器用だね・・・・』
不器用に笑う姿と不器用に折られた箸置きを思いだす。
あっ・・・懐か・・・しい。
「千麻ちゃん?」
「・・・・・あっ」
「どうしたぁ?」
クスリと片眉下げて私の意識のお留守に笑う彼。
そんな姿に急にタイムトラベルをした時差ボケも働き、それこそ意識も注意もしないでぼんやりと口にしてしまった返答。
「・・・・・元カレを・・・思いだしてました」
失敗。
そう理解したのは全部言い切った後に表情を曇らせた彼を見た瞬間。