夫婦ですが何か?Ⅱ
どこまでいっても控えめな良い人で溜め息すら零れてしまう。
そんな俺に何か誤解してなのかビクリと反応した拓篤さんが扉の隙間を狭めて様子伺い。
何だろう・・・・ヤドカリみたいだな。
「拓篤さーん・・・恐くないから出ておいで~・・・」
「お、怒って・・ない?」
「だからぁ・・・・怒られるような事してないでしょ?まさかの超人的パワーで目にも留まらぬ速さで千麻ちゃんにキスしたんだ!とか言ったら怒るかもだけど」
「いいねぇ、そのパワー。軽く男の夢だよね。透明になる薬とか、」
「・・・・拓篤さんって、控えめなのか欲に忠実なのか時々分からないです」
「現実逃避に置いては誰よりも忠実で自信を持って得意だって言える」
「カッコ良くドヤ顔で決めたけどどうなんだろう?」
「えっ?だって一度は夢見ない?透明になって好きな子の部屋とか銭湯とか・・・」
「拓篤さん・・・目が恍惚としてて恐い」
「・・・・・拓篤は妄想入った時ほどイキイキしますから」
いつの間にか脱線していた会話。
軽くおかしな方向に向かっていた会話を軌道修正するように響いた声に意識が移る。
同時に彼も現実に引き戻されたらしく、響いた声に双眸見開くと勢いよく扉を開けてその姿を捉えようとその身を出した。
今まで・・・ヤドカリみたいだったくせに。
そんな俺と彼に対峙するように自宅の扉の前で翠姫を抱えてたっているのは当然千麻ちゃんで。
どうやら何とか落ち着いたらしいその表情はいつもの無表情だ。
表面は・・・。
多分内心はまだ僅かにも動揺しているのだろうと予測はするけど突っ込まない。
無表情で軽く目を細めて俺達に視線走らせて一息。
どういう意味のそれなのか。
「・・・・・相変わらず・・・妄想お盛んね拓篤」
「・・・・は・・ははっ・・・うん・・・うん・・・ごめんね?」
「・・・・そうやってすぐ謝る、」
「うん、ご・・・」
「はぁぁぁ、・・・もう・・・・変わってないなぁ・・・・」
意を決しての再会の場を設けたのだろう。
そして声をかけてみればまったく変わっていなかったらしい彼の姿に呆れなのか安堵なのか深く溜め息をついた彼女が軽く俯く。
どういう心境?
元恋人達の再会を脇役に徹して傍観していると、ようやく顔を上げた彼女がゆっくり歩きだし彼に近づいた。