夫婦ですが何か?Ⅱ





「成程・・・・人がいないところで恐妻だと?」


「きょ・・・恐妻とは言ってないですよぉ?」


「Sっ気強い妻で申し訳ありませんでした。てっきりそれなりにあなたもそのSっ気に満足しているどMかと」


「ま、満足してるしてる!!【どM】には色々と反論あるけど・・・」



その場しのぎに必死で微笑み宥めることを試みて、冷徹に微笑む彼女の背後で拓篤さんが背中を向けて小刻みに震えている。


多分このやり取りに笑っているのだろうと予測が立って、本当にこの三角関係は何なんだろうと?と心で突っ込み。


そんな収拾のつかない場面の救世主的に響いた声は。



「・・・おい、遊んでんなよ、」



全員で視線を走らせた先には一人真面目に荷物を運んで往復している孝太郎の姿で。


さすがに無表情でなく眉根を寄せての不服の言葉。


最もな言葉に誰一人反論返せなかったの当然で、3人で顔を見合わせ数秒の無言の後に脱力。


ほぼ同時に力の抜けた笑みをお互いに向けて、最初に口を開いたのは・・・・・彼女。



「拓篤・・・、紹介するわ。・・・私の犬・・じゃなく年下夫の茜と、愛娘の翠姫」


「千麻ちゃん・・・俺を犬って言いきってから言い直したでしょ?」



明らかなる悪意に突っ込みを入れてもさらりと流した彼女の視線は彼に向いたままだ。


そして改めて紹介を受けた彼と言えば、戸惑いにその目を揺らしたけれどすぐにふわりと微笑んで後ろ頭を掻いて見せる。



「ねぇ・・・・美男美女の夫婦だなぁ。・・・・・千麻・・・当たりくじ引いて、こんな可愛い子産めて・・・幸せだねぇ」



嫌味ではなく本心。


多分・・・。


本当に柔らかく微笑んで翠姫の頬をつつく彼の表情は穏やかだ。


それを分かっているから・・・、そういう人だから・・・。


ほら・・・、


奥様の彼を見る表情も穏やかなんだ。


隣に立つ彼女に視線を走らせればその視線は翠姫をあやしている彼に向いていて、軽く上がっている口の端がその心情を言わずとも物語る。


大好き・・・だったんだよね?


そんなに自然に良い顔しちゃうくらい。


でも・・・・納得だよ。


そういう人だよ。


拓篤さんって。


やはり軽く嫉妬は疼いても悪意は抱かない対象に自分の視線も向けていく。


嫌いになれない千麻ちゃんの元彼。


初恋の相手・・・。


初恋・・ね。




「まぁ・・・・・当たりくじとは言いきりませんが」




不意に響いた彼女の言葉にせっかく穏やかだった場に衝撃。





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