夫婦ですが何か?Ⅱ
振り返れば今の今までいい感じの弧を描いていた口元は通常通りに真横に結ばれ。
さっきの彼の言葉に意を唱えるようなセリフに俺も彼も同じような唖然顔。
「翠姫に関しては否定しませんが・・・・彼に関しては大吉でも大凶でもないというか・・・」
「千麻ちゃん・・・何故ここで落とす?いいじゃん!幸せだって言いきっていいじゃん!大吉でいいじゃん!?俺千麻ちゃんが大好きなお金持ちだし!?」
「失敬な、お金持ちなら誰でも。なんて人間じゃありませんが?」
「千麻ちゃん・・・、ちょっと感動。もう【吉】でもいいや、」
「いや、【吉】でもないと思われます」
「・・・・何それ・・・」
「しいて言えば・・・大【妙】?」
眉を寄せてようやく打ちだした答えを口にした彼女に落胆。
俺との人生を選んだのは大がつくほど【妙】なんですか。
まさかの結論に項垂れれば当然拓篤さんの忍び笑いも聞こえてきて、その瞬間に思う。
ああ、この関係のまま・・・・この空気の関係のまま可笑しな隣人関係が進んでいくんだろうと。
でも、まぁ・・・・。
いいか?
平和・・・だしな。
現状では昼ドラ的なドロドロは予測されないキャストを確かめるように視線走らせ安堵。
それに彼女の告げた言葉も本当。
信用しているんだ。
彼女は絶対に俺を裏切らないって。
だから・・・さ。
「拓篤さぁん・・・」
脱力した感じに彼の意識を引くと軽く微笑み、それを捉えた彼が疑問を浮かべながらも口元に弧を浮かべて。
「・・・・度々可笑しな夫婦漫才が響くかもですが・・・よろしくお願いします」
「・・・別に漫才してるつもりはないのですが?」
「仕方ないよ。それだけ俺たちの息があってるって事だよハニー」
「・・・・と、まぁ、こんなウザい男が隣人だけど我慢できる?拓篤」
「酷い・・・」
「・・・・・っはは、本当だ・・・・夫婦漫才」
結局宣言した通りにそれを披露したような瞬間。
しっかりと入ってくれた拓篤さんが眉尻下げて笑う姿に彼女の眉尻も下がって小さく笑う。