夫婦ですが何か?Ⅱ
未だ変な動悸に満ちている俺を非難するように見上げる彼女の呆れた溜め息も耳に痛く響く。
だって・・・・、
「父さんと仲いいから・・・・」
「はぁ?仲がいいというよりは過去のあなたと同じような関係であったと思いますが?」
「割り切った恋愛でない関係?」
「上司と秘書ですけど!?と言うか、私は自他共に認めるSな女ですよ?なのにあんなどSな男の愛人なんてごめんです」
「それは朗報だよ」
はっきりと言い切った彼女は本気で父さんのSっ気には嫌悪を示して、俺が知り得る以上にSっ気たっぷりの嫌がらせやセクハラを受けたのだろうと推測する。
でも彼女の事だから、
「でも、仕事の面では尊敬し好意抱く部分は強ですね」
「言うと思ったよ」
「大道寺の人間は悲しいかな人間性に難ありですが頭のキレだけは抜きんでてますから。・・・・・容姿も」
「でも、タイプじゃないんでしょ?」
「・・・・・もしかしたら社長からのセクハラの日々でこの顔に警戒心働く様に刷り込まれたのかも・・・」
「父さんのせいかよ!?」
「・・・・いや、追って我儘なご子息の嫌がらせとしか思えない日々も影響してると思いますが」
「・・・・・今はこんなに優しいじゃないかハニー」
「嫌がる妻を無理矢理押し倒して事に及び始めたこの現状は無視しろと言うのであれば・・・・多少は」
開き直って笑顔で現状の自分をフォローすれば、すぐに切り返された現状の俺についての非難。
確かに・・・押し倒してますけどね。
反論のできない言葉に只々微妙な笑みだけを浮かべて彼女を見下ろすこと数秒。
そんな俺を観察するように無表情で見上げていた彼女がようやく一言。
「・・・・・・新手の焦らしですか?」
「はっ?」
彼女の問いに疑問の響きを返して見つめると、彼女の視線がチラリと下に走ってすぐに戻る。
その目の動きだけで何の催促か理解して失笑。
「何だかんだで・・・乗り気だった?」
「ここまでされて不完全燃焼も気持ち悪いです」
「いいのぉ?拓篤さん隣にいちゃうよぉ?」
「・・・・大丈夫です。拓篤ならきっと片付いた部屋でPCにヘッドフォンつなげてーー」
「いい。言わなくていいよ・・・・」
チラリと時計に視線走らせた彼女が予想として響かせた隣人事情。
その詳細を全て聞き入れるまでもなく理解すると苦笑いで切りあげてみる。
そして容易に想像できてしまうそんな光景。