夫婦ですが何か?Ⅱ





ああ、つくづくさぁ・・・。



「・・・・拓篤さんと千麻ちゃんって接点なさそうなのに」


「・・・・出会いとは些細なきっかけで始まる物なのですよ。予測もしない・・・それが後々深く大きくなるとも分からないくらいに微々たる接触なんかでも・・・」


「哲学ぅ・・・・」


「・・・・茜・・」



ハイ・・・。


了解です・・・。


声の響きに、名前の響きにその意味を理解して口の端を上げる。


『焦らすな』


そう言いたいんでしょう?


俺の笑みの意味を理解している彼女がさっきの抵抗なんてなかったかのように首に指先走らせ腕を絡ませると柔らかく引きよせて。


引き寄せられるまま上半身を密着させていけば、ある地点で不動。


重なった唇で。


しっとりと重なって、酷くゆっくりとした動きで啄んで離れて。


至近距離で絡ませる視線はお互いの目しか捉えられないような。



「・・・・・・思いだしてヤッたらぶっ殺しますよ?」


「えっ?・・あっ、ああ、ハハッ・・・もう忘れてたのに」


「じゃあ・・・一生封印していてください」


「・・・・・心配しなくても・・・俺の一番は千麻ちゃんを選んだ時からずっと変わってないよ」



反論に動いた彼女の口。


でも音が響くより早く中断していた行為を再開してその言葉を掻き消した。


代わりに空気に混じる息遣いや微々たる音の旋律に熱が上がって。


逆上せる。


それこそ盛りのついた犬。


馬鹿みたいに熱と快楽に没頭してその身を動かして。


嗚呼・・・・・久しぶりに・・・・飛ぶ・・・・。


冷静でいられない。


冷静でなんかいたくない。


うわっ・・・なんか・・・・、



「・・・っ・・・はぁっ・・・・、大好きだよっ・・・千麻・・・」


「・・・・・・」



堪え切れなかった感情が一気に噴き出したような勢いで口から響いて。


その声に交じってあらあらしい行為の代償の様な息も絡んで響いた。


熱に浮れた甘いセリフの言い方とは違って聞こえたらしい彼女の双眸が軽く見開き俺を見つめて。


意図を探るような彼女の息も同じように乱れている。


紅潮した頬に張り付く髪の細さでさえ扇情的でそそられて愛らしい。


言葉を吐きだし不動になって彼女を見下ろしていたけれど、見つめれば見つめるほど狂おしい程愛しくなって行為に戻りたくなる。


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