夫婦ですが何か?Ⅱ
「妬いて、焦って、怒って、取り乱して・・・俺が大好きだって。たまには示して・・・・」
「・・・・そんなに日々戦争がご希望ですか?」
「フッ・・・ううん、基本は甘く仲良く。・・・でも俺が好きだって事を喧嘩の中にも感じたいんだよ」
「無茶ブリな・・・」
「そう?出来るでしょ?
俺の有能な千麻ちゃんなら」
ね?っとにっこり微笑み下せば返される表情は嫌って程予測済みだ。
それこそ・・・上司と秘書の時代から。
露骨に眉を顰めたりはしないのにほんの少し細まったその目が非難を示して、追って小さく息を吐く。
『呆れた』
そう言いたげに。
でも・・・・必ず・・・。
「最善は尽くします。結果はどうあれ・・・」
「千麻ちゃんの最善は期待以上だから楽しみにしてる」
「・・・・ハードルあげてます?」
「うん。こう言えば更に高く飛ぼうとする千麻ちゃんだって知ってるから」
「・・・・なんか癪ですね」
「それを思う存分に利用して自分の実績につなげてたのが副社長だった頃の俺ね」
クスクスと笑ってあの頃彼女を振り回していた時間を懐かしむ。
本当に・・・・俺が口にして叶わなかったことはなかったと言うほど優秀だった彼女。
優秀で有能で必要不可欠で・・・。
いまもその感情は継続で。
でもあの頃はなかったものは・・・。
「・・・・・・好きになるとは思わなかったなぁ、」
「何をしみじみと・・・、その言葉そっくりそのままお返ししますが?日々ストレスの対象でしかなかった年下上司に契約婚なんて非常識なセクハラ受けて、・・・・こうして組み敷かれるような未来予想図は私の中では不在な物でしたが?」
「何でこんな面白い事になったかねぇ?」
「あなたが婚約早々に同い年の叔父上に彼女を横取りされたからでしょうか。・・・そして・・惨敗」
「・・・・棘のある、傷をえぐるような言い方で説明どうも、」
「あなたの人生たまには負けが無いと成長しませんからね」
「・・・・結婚してからは負けっぱなしだけどね・・・・千麻ちゃんに」
「私に掌見せびらかしてきたあなたが、今更逆転狙っても難しいのよダーリン?」
不意に腹筋を下からなぞる感覚にゾクリと感じて、確かめるように視線を動かしてから彼女の顔に戻していく。