夫婦ですが何か?Ⅱ
ーーーーONE DAYーーーー
なんの変哲もない朝の時間。
これから出勤する彼はすでに身支度整えコーヒーを飲みながらテレビを眺めていて。
その近くで翠姫が遊んでいて。
私と言えば自分のテリトリーであるキッチンで食器を洗い、今はそれらの水けを拭き取っていたような時間。
不意に思いだした事を再確認として彼に向かって声を響かせた。
「あの、今日・・・」
「分かってるよ~。拓篤さんにつきあってお買い物でしょ?」
自分が言葉にするより早く、その内容を記憶ししっかり把握していたらしい彼が代弁して確認。
切り返した言葉も特別嫌味な棘もなく、さらりと了承された事に安堵と共に微々たる違和感。
「なんか・・・」
「ん~?」
「あなたが他の異性に接触することに寛大なのって不気味です」
「・・・・・・・家から一歩も出るな。と、でも言われたい?」
「言われても出ますけど」
「じゃあ、言っても意味ないじゃん」
「いや、そうじゃなく・・・・・なんか・・・大人の対応すぎて逆にこう・・・・気持ち悪い」
「俺にどうしろと?」
確かに無茶苦茶かもしれない。
彼が苦笑いで眉尻下げてこちらを見つめ、それに対して打開策があるわけでもない。
結局は自分自身の捉え方の問題だと不完全燃焼にも口を閉ざして会話の終了。
そんな私に終わりきれなかったらしい彼が小さく息を吐いてからゆっくりとキッチンに対面するカウンターにその身を預けて私を覗き込む。
捉えるのは困ったような笑み。
「何?妬いてほしかった?」
「そういうわけじゃ・・・」
「ふーん・・・」
なんだよ・・・その含み笑いは。
あからさまに目を細めて探るような上目遣い。
腹の中では色々な含みを抱いているのはその表情で明確なのに。
それが分かっているから苛立っても言葉にはせず、言葉にしない私の腹を探って予測して楽しむ彼の悪循環。
それに終止符打つように視線を時計に走らせるとぶっきらぼうに声を響かせる。
「時間では?」
「うん、行く行く」
私の切り上げ方にクスリと笑った彼が含んだ事は述べずに従順にその身を動かして。
椅子にかけてあった上着を羽織るとキッチンの横を抜けて玄関に向かう。
そんな彼の背中を軽い苛立ち交じりに追って廊下を歩いて。