夫婦ですが何か?Ⅱ
「・・・・そんなに良い人でさぁ、更に言えば千麻ちゃんも彼に関しては未だに好感大なわけでしょ?」
「う・・うん・・・」
「・・・・・きっかけ、」
「・・・【きっかけ】?」
「きっかけさえあれば簡単にどうにかなっちゃう危険性大の元恋人同士って事だよね」
「・・・・・っ・・ま、まさかぁ・・・」
あり得ない。
ないない。
そんな風に笑って手を横に振ってみせるのに本心からはそれを否定できず。
浮かべた笑みは不完全な上に吐きだした声は動揺に揺れている。
だって・・・だって・・・そんな気が今更もろにしてきた。
男から見ても良い人な拓篤さんで、千麻ちゃんなんて初恋でぞっこんだった過去がある。
でもそれを言ったら俺たちの恋愛ドラマも負けてない!と、自分を奮い立たせて脳内で再放送。
結果・・・。
思いだされるのは新婚初夜からイケずでどSでツンばかりの彼女。
そんな記憶に苦笑いを浮かべている俺を冷めた眼差しで見つめてくる叔父。
そしてぽつりと・・・。
「悪意が無い人ほど逆にライバルとして危険なんだよね」
「っ・・・・本当だ!?目の前にいい例がいたのに俺何してる!?」
「でしょ?俺も別に茜ちゃんに悪意あったわけじゃないし、恋愛は後付な芹ちゃん誘拐劇だったからね」
「そうだよ・・・犯人がまさかの兄弟の様な雛華で、それが逆に自分の首を絞めたって過去があったのにぃ・・・・。
・・・・二の舞?」
「そうならないようにせいぜい警戒すべきじゃない?・・・・まぁ、帰ったら手遅れになってるかもだけど・・・」
「ノォォォ!!」
「勤務中に煩いですよ」
不意に響いた声と脳天に落とされた衝撃は同時だったと思う。
そして香る匂いと声音や口調は未だに好感が持てないと眉根を寄せ振り返る。
視界に捉えるのは今しがた俺を殴ったと思われるファイルを手にした高身長で切れ長の流し目の男。
どこぞの執事かホストのように感じる装いで、いつもその顔には含みのある妖艶さも感じる微笑み携えて。
いけ好かないこの男は雛華の秘書で、更に言えば我が奥様の初めてと3番目の恋人・・・・のちセフレ。
初婚当時も色々と俺と彼女の仲を引っ掻き回してくれたこの男。
元カレ・恭司だ。