夫婦ですが何か?Ⅱ
今も嫌味な笑みでこちらを一瞥。
すぐに挑むように睨み返せばさらりと視線は外され、持っていた書類を渡すべく雛華に意識を移した姿。
「ここは家族の座談会場ではなく利益を上げるべき神聖な職場なんですよ?元副社長」
「本当に嫌味などS男・・・」
「失礼な何の確信あって人をどSだと?」
初めての千麻ちゃんを上に乗せたんだろ!?
とは・・・さすがにこの場で言えない。
込み上げた言葉をグッと押しこみ飲み込むと、全て読み通しているかのような男が口元の弧をニッと強める。
そして一息置くと。
「でも・・・なかなか興味深い話題のお話だったようで、」
「うん、千麻ちゃんの2番目の彼って知ってる?恭司君は」
「ああ・・・千麻が惚れこんでいたあの個性的な彼、」
「今ね何の因果かマンションの隣室に住んでるんだって」
「それはそれは・・・・ご愁傷様です。あっ、何なら2度目の離婚祝賀会でも設けましょうか?」
「なぁ・・・何でお前ら2人揃うと俺を徹底的に弄るわけ!?」
「面白いから」
「面白いからです」
見事『面白い』の部分をハモらせた2人に絶句と落胆。
おかしい過去の俺は逆にそちら側の人間であった筈なのに。
彼女と私生活を共にし始めた位から俺の立ち位置はガラリと変わった気がすると、弄られキャラに陥った自分を嘆いても打開策があるわけでもなく。
これ以上言葉を響かせてもこの2人の思うつぼだと沈黙を守ってみた。
それが功を奏したのか話題は自然と本来の仕事内容に軌道修正。
恭司がさらりと今までの流れを立ち切って秘書としての職務を全うし始めたから。
「SANCTUARYの撮影が明後日からですが、お2人とも現場に顔出しなさいますか?」
「ん~、俺はいいや。恭司君代わりに見てきて・・・・・茜ちゃんは行くんでしょ?どうせ」
「何だよ、『どうせ』って、」
「だって・・・ねぇ?」
何だよその含みありな感じ。
いや、言いたい事は嫌って程理解しているけどさ。
だからこそ何となく気まずい感じに表情を歪めれば、俺と雛華の両者を交互に捉えた恭司が悪戯に口の端を上げ興味を示す。
うわっ・・・絶対に知られたくない。