夫婦ですが何か?Ⅱ
な、なんだ?
何でいきなり威嚇!?
まったく理由の分からない、幼馴染とも言える兄的な存在に何故か睨み下され威嚇されている現状。
混乱して雛華にも助け舟を求めて視線を走らせても、『さぁ?』と言わんばかりに両手を広げて理由の不明を示してくる。
仕方なしに威圧的な人工的グリーンアイに視線を戻せば。
「・・・・・・・隠してる?」
「はっ!?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「み、翠・・・くん?」
「・・・・・・・・・・・・・・知らない・・・か、」
俺の心を探るように見つめていた目と体の距離がスッと離れ、結局何を言わんとしていたのか分からなかったそれ。
疑問を視線で向けてみても彼は彼で何やら複雑に表情を歪めて後ろ頭を掻いて。
そして溜め息。
「翠君・・・さては徹夜明けで不機嫌でしょう?」
的確に相手の状況を言い当てたの雛華で、むしろ家族以外でいうなら雛華しかこの複雑な彼の性格なんかを理解できないと思う。
「・・・・明後日の撮影にどうしても小物追加したくて・・・気がついたら濃紺だった外が鮮やかな青空に・・・」
「相変わらず仕事に夢中だね。蓮さんそっくり、」
「でも・・・何で俺がいきなり追い詰められたの?」
不機嫌の威圧はどうやら仕事も影響していたらしいことは分かった。
でもそれだけではなかったように感じる自分への威圧の核心に触れると、相変わらず眉を寄せていた姿が再度俺を見つめて小さく息を吐く。
「・・・・茜が一番可能性があったから」
「はっ!?何?主語っ」
「ま・・いいや。違ったみたいだし・・・」
疑惑の不発。
軽くそれに落胆した姿が、また一から出直しだと溜め息をつきながら背中を向けて扉に向かう。
本当に何の為の来訪だったんだ!?と雛華を振り返っても首を横に振っての知らぬ存ぜぬ。
マイペースを貫いて、逆に俺たちに疑問ばかりを残してその美麗な姿が静かにその場から気配を消していく。
パタリと扉が閉まった瞬間に脱力し、散々な今日は厄日かもしれないと深い溜め息をついて頭を抱えた。