夫婦ですが何か?Ⅱ





Side 千麻



疲れた。


心底疲れた。


そんな心情で深く息を吐くと痛い程理解している拓篤が気を遣うように隣から覗き込む。



「あ、あの・・・ごめんね?つい我を忘れて・・・千麻を忘れて動き回って・・・」


「ううん、いいの。・・・・知っていた筈なのに忘れていた私の不備だから」


「う、うわぁん・・・千麻ごめん~」



すっかり忘れていた過去の彼の取り扱い方法。


彼との買い物は色々と注意すべきことが多いのだとすっかり忘れ、うっかり久々のそのペースに振り回されて現状疲労に満ちての帰路。


彼の腕の中には当初予定の限定フィギュアの箱が数個、その手首には予定外の本やらゲームやらDVDやら。


持ち切れなかった袋はしっかり私の両手首にかかっているという現実。


そんな私の背中ではぐっすりと眠る愛娘の体重もかかっているのだ。



「翠姫ちゃん寝ちゃってるね・・・」


「まぁ・・・何時間も連れまわされた疲労でしょ」


「す、すみません」


「知ってた?私達お昼も食べてないのにすでに3時近くだって、」


「えっ?あっ・・・・・・・・・・お腹空いた・・・」


「今頃・・・」


「いやぁ、夢中になりすぎてて食事の概念忘れてたよ」



あはは、と眉尻下げての笑みに脱力。


この人は放っておいたら何日も食事しないんじゃないかと不安にもなる。


よく今日までまともに生きてきた物だと若干の呆れを感じながら、そんな生活を打破するような提案を口にした。


「早く理解ある彼女作って結婚したら?」


「ああ~・・・うん、」


「モテないわけじゃないでしょう?」


「まぁ・・・でも、僕につきあいきれたのは千麻だけだったっていうか・・・」


「残念だけど私はもう人妻ですから」


「し、知ってるよぉ。茜君と・・・・仲・・いいし?」


「さりげなく首見るのやめてくれない?」


「ご、ごめん・・・」



『仲がいい』でチラリと走った視線を見逃すはずもなく、淡々と指摘すれば見ていた事を否定するでもなく馬鹿正直に謝って首を180度逆に振り切った彼。


そんな姿に小さく笑い歩みを進めればようやく視界に捉えはじめた自宅のマンション。


やっとその身に休息を与えられると安堵した瞬間、不意に視界に捉えた姿に意識が移った。



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