夫婦ですが何か?Ⅱ
「フフフッ・・・甘いぜこの時間」
「存分に堪能なさいませ。滅多にない激甘で稀に見るあなたの優位でございますです」
「毎晩こんなでもいいよぉ」
「馬鹿ですね。稀に見る甘さだからこそこういう場面でその味が際立つんじゃありませんか」
「まぁね、」
本当に分かっているのかしら?
そんな風に問いたくなるほど軽い調子で返された返事。
しかもその返事をしながらその唇は私の額に軽く口づけを落としていて。
終始にこやかな彼は現状にひどくご満悦なのだと鬱陶しいくらいに分かる。
でも抗うまい・・・。
今日くらいは。
そんな事を思って今にも弾かれそうだった嫌味な言葉を静かに飲みこんで。
指先から唇から、出来る限りの手段で私を愛でてくる彼の愛撫に従順に、猫のように受け流す。
大人しく、彼が望むままに・・・。
はて・・・、
「・・・・なんか今ダッチワイフな気分です」
「何でぇ!?俺超愛情たっぷりに接してたよね!?」
「はい、・・・愛情たっぷりに愛でられてたかと」
・・・人形の様に従順に。
つまりは問題は彼でなく受ける私が【らしく】ないからそう感じただけなのだ。
なのに彼ときたらその一言に何故か今までの浮れようが嘘のように落胆し眉尻を下げる。
「何で俺の愛を千麻ちゃんはストレートに受け取ってくれないのかなぁ・・・」
「あなたの性格上ストレートなどあり得ない。と、未だ変な先入観が心の奥にあるのでしょうか」
「それ・・・秘書時代での先入観だよね?あれから色々・・・そう色々あってもう数年・・・。いい加減素直に俺に愛されてくれませんか?」
「失敬な。全力で愛されているつもりですが」
「千麻ちゃんっ・・・・」
感無量。
不満げに眉を顰めていたくせに、最後の立った一言であっという間に機嫌が直ったらしい。
絡みつくような響きで名前を呼んで、すでに密着していた体を更に隙間なく埋めようと抱きしめてきて。
こうした瞬間には平穏な心で思うのだ。
彼が私以外に揺れ動くことはないと。
確信とも言いきれそうなくらい。
彼は心から私の物だと己惚れ、その温もりや存在に浸る。
それこそ・・・余裕からの優越感の構築。