夫婦ですが何か?Ⅱ





申し訳なさそうな響きで予想通りの謝罪を口にした彼。


それに言葉を返そうか。


謝る事ではないと。


謝るべきはどちらかと言えば私の方で。


ああ、でも・・・・どれを言葉にしても野暮だ。


気にするなと言ってももう事を成した後では『気にならない』事にはならない。


だったら言葉なんてもどかしい事はなしに・・・。



「・・・・千麻ちゃん?」


「・・・・・・・監禁まではしません」


「・・・・」


「でも・・・こうして・・・好きな時に抱きしめられる範囲にいてください。・・・・・それだけで充分です」



あなたには私が必要だと感じる瞬間を示してもらえたら。


それだけでいい。



「千麻ちゃんとなら・・・一生このまま・・・離れられなくなってもいいよ」


「・・・・クサくてウザいです。・・・ってか、もう眠いので余計なお喋りは終幕でいいでしょうか?」


「フッ・・・・うん・・・・・・・」



その笑いが余計です。


きっとあなたの事ですから・・・『可愛い』とでも思っての失笑でしょう?


下手な照れ隠しの切り返しだと。


でも、それに言葉として突っ込まないでいてくれたのは【らしくない】優しさですね。


言葉は不要に、代わりに自分を柔らかく包み込み直してきた温もりに浸って。


本当はさして眠くなかった目蓋を下すと、



「おやすみ千麻ちゃん・・・」


「・・・・・・おやすみなさい・・・・ダーリン」



響いた声の力は強力だ。


そう昔から・・・。


私は彼の眠りに誘うこの言葉に弱いのだ。


それこそ魔法のように作用して、静かに優しく意識の下降。


温もりや心音も全て全て安眠に沈む要素ばかりで。


気がつくこともない。


知らぬ間に意識は沈んで休息。












束の間・・・の?









ああ、明日こそは彼を追い詰めることのない良妻な自分でありたい。




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