夫婦ですが何か?Ⅱ
ーーーーNEXT MORNINGーーーー
ああ・・・。
この絶望する倦怠感。
意識の覚醒と共に身に染みるように痛む腰を摩った。
眠った時に衣服を身につけていなかったのだから、当然指先に触れるのは素肌の感触。
そうして重い目蓋をゆっくり開けて、気がついた第二の失敗に眉根を寄せた。
「コンタクト・・・・外すの忘れてた・・・」
うっかりそのまま眠ってしまっていた目に刺激が走って、軽く涙目になりながら乾いたそれを外していく。
数回瞬きし、手さぐりで眼鏡を手にすると視界をクリアにし。
そうしてようやく捉えた現状に、少し疑問に思ってから時計に視線を移して血の気が引いた。
完全なる寝坊。
それも平日に。
いつもなら朝食も作り上げて彼が身支度終えテーブルにつくような時間。
どおりで一緒に眠っていた筈の彼が不在だと合点がいった。
それと同時に・・・・。
何故起こしてくれなかったのかと。
体の倦怠感も最悪な事態には作用しないらしく、飛び起きて床に足をつければ駆け足でクローゼットに。
適当に衣服を纏って、髪の毛を止めることさえ時間の無駄だとその身を返す。
よくよく見れば翠姫の姿もなく、本当に自分一人がのうのうと眠っていてしまったのだと、失態に嘆きながら寝室を飛び出して。
ああ、せめておにぎりか何かは間に合うだろうか。
そんな事を考えながらリビングの扉を勢いよく開け入室。
と、同時・・・。
「っ・・・?」
あれ?
「あ、千麻ちゃん『おそよう~』もう少し寝てるかと思ったのに、」
「えっ・・あ・・・はい・・・でも・・・朝食を・・と、」
思ったけど・・・・。
思ったのですけど・・・、
いらぬ心配。
入室した瞬間に鼻を掠めた空腹をくすぐるような匂い。
何故そんな匂いがするのか疑問に感じた直後に声をかけてきた彼に視線を移して判明。
いつもの定位置に座り、可笑しそうに私に笑いかける彼の前には飲みかけのスープが置いてあって。
そんな彼の近くでカウンターに寄りかかりながら、カップに注いだスープを飲んでいる紅さんの姿。
その視線がゆっくり私に移され、相変わらずの無表情が数秒程無言で見つめ、
「・・・・・おはようございます。・・・・キッチンと・・・食材お借りしました・・・・ごめんなさい」
「・・・・・いえ、・・・・・むしろ・・・朝食もまともに用意出来ずにすみません・・・・」
くるりと私にその身を向けると、軽く頭を下げキッチンの無断使用を詫びる姿。