夫婦ですが何か?Ⅱ



でも・・・、


だって・・・、


今この場は・・・、





私がいなくとも成り立っている。






「・・っ・・・すみません。・・・着替えてきます」



私の動揺悟った彼の表情の焦りに同調。


今にも私に駆け寄りそうな雰囲気察して、先に言い訳つけてその場から逃亡を図る。


当然私の動きに俊敏に立ち上がった彼が動く気配を背後で感じ、鬼から逃げるかのように心臓を跳ねらせ寝室に飛びこむとクローゼットに走る。


自分がクローゼットを閉めた音と、寝室の扉が開いたのは同時だったと思う。


焦って施錠した扉に寄りかかって床に座りこめば、すぐに響く扉を叩く音。


声。



「千麻ちゃん・・・」



低く・・・焦っている声。


それさえも・・・苛立つ自分が今は嫌。



「ねぇっ・・・、出てきて・・・・」


「・・・・・」


「ごめん・・ねぇ、・・・今度は何がーー」


「何で起こしてくれなかったんですか?」




困惑と焦りに満ちた彼の懇願。


それを遮って苛立ち交じりの声で返したのは最初の不満。


何故・・・起きた時に起こしてくれなかったのか。


起こしてくれていたら・・・紅さんより早くまともに食事を用意できたかもしれないのに。


そんな子供じみた八つ当たりの様な感情で攻撃的に弾いた言葉の響きが自分にも返って痛みを広げる。


理由だって分かってるのに。



「・・・ごめん・・・、ただ・・寝かせてあげたかっただけで、」


「で?・・・朝食はどうするつもりだったんです?翠姫の世話は?」


「それは・・・」


「【普段】であるならっ・・・絶対に私を起こすしょう?会社に行くあなたですから、翠姫の世話だって・・・・なのにっ、」


「ね、ごめん、落ち着いて・・・?」


「紅さんがいるから大丈夫だとでも?!翠姫も懐いてて、あなたは【念願】だったスープを飲めたんですものね?夢にまで見ていた・・・」


「っ・・・、それは、」


「美味しかったですよ。・・・・あなたが未だに心に残っているくらい・・・・・・美味しくて・・・、惨めで、」




あっ、声が震える。


『美味しい』と認めて声に出す度に・・・負けていくような。


口にして、醜悪な自分を目の当たりにする度に悲しくなる。


情緒不安定なんてものじゃない。


自分の口から弾かれる言葉が怖い程。


簡単に突き崩される自分が弱くて愚かで・・・辛い。



「千麻ちゃーー」


「今のこの場所に私の必要性を感じません・・・」




彼の呼ぶ声にさえ苛立つ自分が・・・・辛い。



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