夫婦ですが何か?Ⅱ



『ごめん』


その言葉に悪意なんて全くないのに。


逆にないからこそ自分の醜態を責められている気がして。


そんな事もないというのに。


勝手な被害妄想でまた落ち込んで、そんな私を多分あなたは、



「・・・・・・えっ・・・・・・必要性・・って、」


「・・っ・・・・」


「ちょっ・・ねぇ、その・・・、昨夜その話題に関しては蟠り解けたのかと・・・・」


「・・・・すみませんが・・・私が悩みだすといかに面倒な女かはあなたが身を持ってよく理解していたかと、」


「っ・・・・再発・・・ですかぁ・・・・・」



彼の落胆した響き、後に深い溜め息が聞こえこちらも申し訳ない感情が浮上する。


そう浮上はするのだ。


でもそれ以上に厄介な感情の方が大きくて、彼の不憫な状況を理解してもその態度を改めることが出来ないでいる。


お互いに沈黙して数秒。


どうしようもない葛藤の苦しさに蹲る様に膝に額を寄せたタイミングに。



「やっぱり・・・紅ちゃんにはホテルに移ってもらおう」



どこか疲れたような声音で弾かれた提案。


それは確かに最善の解決策で、でもどこか問題を中途半端に未解決で他所に退ける様な。


こんな時でも手近な解決策より後者に意識が行く私は本当に面倒だ。



「・・・そんな事・・・言って無いです」


「・・・・でも、・・・千麻ちゃんは口で言うほど大丈夫じゃないでしょ?」


「っ・・・」


「気丈に振る舞おうとして、出来なくて、抜け出せない葛藤のループにハマるでしょ?・・・・・・・辛いでしょ?」



最後のは労わる響きだと気がつく。


耳に優しく入りこむというのに、心に届くまでに負の感情に汚染されて。


素直に優しさに反応したいのに、どうしても悲観的で自虐的な私が自棄になって。



「・・・私の・・せいですか?」


「えっ?」


「結局・・・私の厄介な性格のせいですよね?私が悪いんですよね?」


「違うって・・・、千麻ちゃん、ね?とりあえず落ち着いて・・・」



嫌味で攻撃的な私の言葉に根気よく、言い聞かすように静かに言葉を重ねる彼は、多分今悲痛な顔をしている。


自分の感情がまっすぐに伝わらないことにもどかしくて、切なくて。


ああ、本当・・・。


あの頃の再現の様で嫌ですね。


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