夫婦ですが何か?Ⅱ
困惑している。
突如割り切った様に、感情無しに動き出した私に。
だって、
楽なんですよ。
【コレ】であるなら、いとも簡単に仕方ないと片す事が出来てしまうんです。
仕方ないと。
「ち、千麻ちゃん?」
「何でしょうか?」
「そ、その、気のせいかなぁ?眼鏡の効果か、その・・・、懐かしくも複雑な印象を千麻ちゃんに感じるんだけど、」
「日本語お願いします。まったくもって意味がわかりませんが、」
「その・・・、つまり・・・っ、
何か、義務的な・・・秘書千麻ちゃんに戻ってるような。
新婚当初の感情的でない、仕事で奥さんしてるみたい・・・な?」
「・・・」
まさかね?
そんな、場を和ませる様に形ばかりの笑みで確認してくる姿を無言で見つめる。
だって、答えなくとも確信あって言葉にしたのでしょう?
そしてその疑問を肯定しましょうとも。
それが楽であり、割り切ってこの時間に挑めるのですよ。
だって、どんなに自分に過酷で追い詰めてくる物でも、『仕事なら仕方ない』と思えるじゃないですか。
「何か・・・問題が?」
「っ・・・有りでしょ!?大有りだよね?!」
「そう言われても・・・、私の図る頭では割り切って妻の役割を果たせ、それによってあなたも私に気遣う事なく久々の逢瀬を楽しめる。
・・・万事解決では?」
「どこがっ!?今まで以上に気遣うわ!!」
「はあ・・・」
「っ・・・ねぇっ、ちょっと待って、・・・その執着ないつれない反応さぁ、」
「茜、」
「っ、・・・はい」
「・・・お仕事の時間ですよ」
「っーーーー!!」
彼のどこか必死の訴えを、自分では冷静に聞きいれ返答していたけれど、最終的には仕事を促し姿勢の継続。
と、言うよりは、
感情的な自分が深い深い所に隠れて閉じこもって見つからないのだ。
でも、今は探したいとも思わない。
嫉妬に燃えて、自虐的で悲観的な自分に疲れたのだ。
これ以上、自分からも彼からも呆れられ嫌われる事のない事務的義務的なこのスタイルがいい。
良妻とは・・・、他者からみても完璧な良妻とは。
結局・・・、
自分を殺して作り上げた仕事の上での妻にすぎないのではないかと、
それが今の私の答え。
そんな結論に納得し数回頷くと静かに顔をあげて彼の腕を解いて歩く。
お仕事の時間だと。
秘書ではなく、今は・・・、
【妻】という仕事の。