夫婦ですが何か?Ⅱ
「でも・・・、本当、」
「うん?」
「何であんな可愛いんだろうね、千麻って」
「拓篤さん・・・、それ、今俺に言う?」
俺の追求の眼差しを無しに、胸の内に留めておけなかったらしい感想を、その感情のままにふにゃりと笑って告げてきた拓篤さん。
これまた悪意なくな笑みと言葉に脱力し、牽制を響かせていいものかも迷ってしまうほど。
それでも、
人畜無害そうであろうとも、
実際、昨夜はチラリと雄の性分垣間見せた列記とした男。
それも我が奥様の心をくすぐる力をお持ちの元彼様だ。
そんな答えを打ちだすと、なかなか言いにくい感じに危機感無くほんわか微笑む姿を、形ばかりに目を細め見つめ威嚇を示して。
「拓篤さん、」
「う、うん・・・」
「拓篤さんがものすんごく良い人で、一般常識やモラル備わった人だとは理解しての牽制なんですが、」
「け、牽制?」
「・・・・千麻ちゃんは俺のだから、」
「・・・・」
「過去にどれだけ2人の関係が深かろうと、絆が強かろうと、俺は絶対に千麻ちゃんを手放す気はないし・・・・焼け木杭的な意味合いで触る事も許さないから、」
「っ・・・」
「今、・・・良くも悪くも彼女の感情乱していいのは俺だけだから・・・・
友情以上の気持ちで千麻に近づいたら・・・後悔させますよ?」
最後は相乗効果である笑みを強めての締め。
ニッと口の端を上げ、壁に拓篤さんを押しやっての牽制に、息を飲み驚愕にその目を揺らしながら聞き入れていた姿。
でも決して自分も悪意を抱いている相手でもなく、そこまでの危険性を感じているわけでもないからすぐに開放し。
逆に少し言い過ぎたかと軽く息を吐きながら視線を他所に動かした瞬間。
「カ、・・・・カッコイイ~・・・」
「・・・・・はっ?」
「わぁぁぁ、コレだよコレ!・・・やっぱ絵になるよなぁ。ね、ねぇっ、今度さ衣装変えてカメラに向かってやってくれない?!」
「・・・・・・・なんか異様に恥ずかしくなってきた・・・」
「えっ?えっ?ど、どうしたの?おーい?茜君?」
教訓。
この人には嫌味なやり方は通用しない。