夫婦ですが何か?Ⅱ



自分的にはキツク嫌味交じりに牽制出来た気でいたというのに、捉える側が重点置いていたのは内容ではなく、迫る俺の印象であったという悲しい結果。


一瞬嫌われるのではないかと懸念までしたのに、返された反応は感極まってやや興奮を見せる物。


多分・・・また何かヒーロー的な印象で俺を見ていたんだろう。と答えを打ちだせば、自分の発する言動行動が常に演技がかったクサイものなのかもしれないと感じ羞恥の浮上。


そして脱力してその場にしゃがみこめば、何故俺が落胆しているのかまったく理解できない様子の拓篤さんが困惑気味に覗き込んで。



「ぼ、僕・・・なんか悪い事言った?」


「いえ・・・・どちらかと言えば俺が感じ悪い事言いました」


「は。ははっ・・・なんかごめんね?」


「謝られたぁ・・・・」



何故だろう。


この人にはどんな悪態を告げようと天然パワーで跳ね返って自分に返ってきている気がする。


分かっている。


こういう人には今までの自分の感覚は通用しないのだと。


暖簾に腕押し。


そう頭に念仏を唱えて、頭を支えながらふらりと立ち上がり一言だけボヤキ。



「はぁ・・・千麻ちゃんはぶっ壊れるし、拓篤さんにはまともな牽制出来ないし・・・・俺厄日かな・・・」



もう笑うしかないと、感情に伴わない乾いた笑いを零しながらエレベーターホールに向かってようやく一歩を踏み出した瞬間。


2歩目の足を地につけて、前進する筈が後退。


自分の意思でない後退に驚く間もなく遠心力も感じ、ようやく視点が定まったのは背中が壁に密着した瞬間。


そして絡んだ視線に一瞬で飲まれた。


誰?


そんな馬鹿な言葉が浮上する程の威圧を与える拓篤さんの視線。



「っ・・・えと、」


「千麻・・・・どうしたの?」


「・・・えっ?」


「『壊れた』って・・・、

ねぇ、茜くん、」


「は、はい・・・」


「確かにね、僕はもう千麻の人生に関与できる人間じゃないって常識もモラルも持ってるつもりだよ」


「あ・・・はい・・・良かった・・です、」


「でも・・・・、言える立場じゃないって分かってても馬鹿して言えば・・・・

千麻が傷ついて・・・迷って悩んで泣いたりするのは絶対に嫌だから、・・・・・見過ごせないから」


「・・・・・・」


「・・・っ・・うん・・・うん、・・それだけ・・です」



うわ・・・・。


『カッコイイ』


と、賞賛の声を上げるべきでしたか?



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